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講義No.10743

バイオセンサで酸化ストレスを検知し、健康な魚を育てる

ときに体を傷つける酸素

 魚が呼吸で取り込んだ酸素の一部は、活性酸素として体にたまります。体内には抗酸化作用があり、通常は悪い影響はありません。しかし過度に紫外線を浴びたり、抗生物質の投与などがあったりすると、処理能力を上回る活性酸素が発生して酸化ストレスになります。長い間酸化ストレスを受けると、肝臓に負荷がかかったり、免疫機能が弱くなったり成長が遅くなったりします。酸化ストレスを早く検知できれば魚への悪影響を減らすことができ、飼育環境の改善や養殖場における生産性の向上が期待されます。今までは魚を水中から出して血液検査などを行っていましたが、測定する時点での酸化ストレス指標しか検出できず、酸化ストレス応答の全貌や指標の経時変動がわかりませんでした。

スーパーオキシドを追え

 酸化ストレスの変動を把握するには魚を自由に泳がせながら指標を測定することが望ましいです。そこで、最も反応性の高い活性酸素であるスーパーオキシドを指標とし、この数値を正確にとらえることで魚の酸化ストレス応答を評価します。スーパーオキシドは水中での寿命がとても短く、早ければ1マイクロ秒で消えてしまいます。今までは測定が難しかったのですが、バイオセンサによる電気化学的測定で迅速な測定が可能になりました。

魚に優しい電極を「印刷」する

 今まで開発されたセンサの測定電極は硬質のものを魚に刺していましたが、魚を傷つける恐れがあり、測定の部位や魚種が限られていました。そこで、薄くて柔らかく軽いフレキシブル電極が作られました。厚さ0.1mmのOHPフィルムに導電性の金と銀のナノインクからなる電極を印刷し、魚体に貼り付けます。小さいので使える魚種も増え、曲がるので魚のサイズや体形に合わせるなど測定部位に適したセンサの形状が作れます。魚体への負担が少なく、魚を自由に泳がせながら酸化ストレスの度合いを把握し、その異常変動を早期発見することで飼育環境の改善につながり、大きく元気で病気に強い魚を育てることができるのです。


この学問が向いているかも 生物機能利用学、水圏生命科学

東京海洋大学
海洋資源環境学部 海洋環境科学科 助教
呉 海云 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 チャンスがあれば、ぜひあなたもほかの国に行ってその国の文化や科学技術を学び、自分の視野を広げてください。現地に行かなければわからないことはたくさんあります。高校で勉強することは意外と将来役に立ちますので、興味を持って勉強を続ければ、いいことがあります。夢があればそれを諦めないでください。
 また、勉強するだけでなく、人との出会いを大事にしてください。日本に来た当初は「あいうえお」にも困っていた私が普通にコミュニケーションをとれるまでになったのも、いろいろな出会いのおかげです。

先生の学問へのきっかけ

 私の祖父は体が弱く、よく病院についていきましたが、そこで医師や薬のおかげで治る人を見ていて、子ども心に周囲に貢献できる人になりたいと思いました。当初は薬学に進み、クラゲの毒素のような海洋生物由来の化合物を利用して薬にする研究をしていました。現在の学問へのきっかけは、日本に留学して生物の素晴らしい機能を利用したバイオセンサに関する研究に一目惚れしたからです。バイオセンサは物理・化学・生物分野がクロスする面白い研究で、いつか私の得意分野である化学を生かして関連分野の発展に貢献できればと思いました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

医療機器マーケティング/水族館学芸員/水産・食品会社品質管理/ IT技術員

研究室
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呉 海云 先生がいらっしゃる
東京海洋大学に関心を持ったら

 東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。

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