夢ナビ 夢ナビ

TOPへ戻る

講義No.10739

トマトを全滅させる微生物がいる? 植物の免疫と微生物の関係

トマトが枯れるのはなぜ?

 微生物の一種であるバクテリアにはトマトを枯らすものがいます。日本全国に生息する青枯病菌です。感染力が強く、一度青枯病菌に汚染された土ではトマトが全滅してしまうおそれがあります。バクテリアが集まるとバイオフィルムというかたまりができるのですが、青枯病菌は植物の水を運ぶ道管の中でバイオフィルムを作り、詰まらせてしまうのです。そのため、味はともかく青枯病に強いトマトを次々に開発し、食用のおいしい品種と接ぎ木することで青枯病を抑えています。こうした農作物の病害を解決するには、植物の免疫機能と微生物との関係性をさらに明らかにする必要があります。

細胞単位の免疫

 植物の免疫にはサリチル酸とジャスモン酸というホルモンが必要で、菌の種類によって役割分担をしています。生きた細胞にしか寄生できない菌にはサリチル酸が、細胞を殺してから働く菌にはジャスモン酸が活性化して防ぎます。かつては片方のホルモンのみが菌の種類ごとに選択的に活性化すると考えられていました。しかしよく観察してみると、サリチル酸が感染部位周辺で活性化している時でさえ、感染部位の外側の細胞ではもう一方のジャスモン酸が活性化しており、実は両方のホルモンが同時に違う場所でそれぞれの役割を果たしているのです。
 植物の免疫を調べるときは通常、植物全体に病原菌を散布して観察します。するとすべての細胞に感染が広がるため、片方のホルモンしか働いていないように見えていたのです。実際に植物が病気になるときは局所的に症状が起こるため、細胞単位で観察することで、より自然に近い状態が確認されたわけです。

共生する微生物も

 バクテリアには、植物に害を与えるものだけではなく利益をもたらすものもいます。マメ科植物の根に付着する根粒菌は植物が光合成で作った栄養をもらう代わりに、土の中の窒素を植物が利用できる形に変えてくれます。このようにある種の微生物は免疫をかいくぐり、植物に良い影響を与えています。植物の細胞内の免疫反応にはまだまだ謎が多いのです。


この学問が向いているかも 農学、植物病理学、植物免疫学、微生物学

龍谷大学
農学部 植物生命科学科 准教授
別役 重之 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 現代社会はコストパフォーマンスを重視する傾向にあると思います。しかし無駄に見えることの中におもしろさの種があり、ときには人生を変えることもあると思います。進路は必ずしもきれいな一本道を描く必要はないと実感しているので、真っすぐ進むことだけにこだわらず、一瞬一瞬のさまざまな出会いを大切にしてほしいです。
 また、物事に取り組むときは自分なりに必死にやってみることも大事だと思います。食わず嫌いをせず、まず主体的に挑戦してほしいです。すると自分の好きなことがわかり、進みたい道が見えてくるかもしれません。

先生の学問へのきっかけ

 高校生のころは建築系志望でしたが、生物の細胞内分子の働きをCGで描いたTV映像に衝撃を受け、生物学志望へと変更しました。大学では発生や進化に興味を持ちながらも、研究室配属で植物の免疫を調べることになりました。テーマ変更も模索した中、ある先生に「面白い研究というのは、先生に与えられるものではなく、自分自身で探して作るもの」と言われ、考えを改めました。より深く研究対象を考えるようになると次々面白いことが出てくるようになります。いろんな分野や人との「出会い」も経て、結局、植物免疫研究に没頭しています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

農薬会社研究員/食品会社商品開発/化粧品会社マーケティング/大学研究員

研究室
大学アイコン
別役 重之 先生がいらっしゃる
龍谷大学に関心を持ったら

 『進取と共生』〜世界に響きあう龍谷大学〜
 龍谷大学は、370年の伝統を超え、新たな一歩を踏み出しました。
 その歴史は、江戸時代初期の寛永16年(1639)、京都・西本願寺に、仏教の研究と人材養成のための「学寮」が設けられたことに始まります。
 そして、近世から近代、現代への日本の歴史の中で新しさを重ねて370余年。
 現在では京都・滋賀の3つのキャンパスに、9学部・31学科、専攻と短期大学部、大学院を擁する、全国屈指の総合大学として、発展を続けています。

TOPへもどる