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講義No.10736

テングシロアリの羽の秘密が、世界の水不足を解決する!

雨の中でも飛べるテングシロアリ

 オーストラリアに生息するテングシロアリは、新しい巣を作るために移動する際、天敵に襲われないように雨季に飛び立ちます。テングシロアリの羽は胴体よりもかなり大きいのですが、雨の中でも平気で飛ぶことができます。彼らの羽の表面には、雨粒を効率よく除去できる特殊な構造が備わっているのです。

羽の表面構造を人工的に再現する

 テングシロアリの羽の表面には、長さ50マイクロメートル(1マイクロメートル=1000分の1ミリ)、太さ1マイクロメートルの毛のような突起と、長さと太さが5〜6マイクロメートル程度の小さな突起という、2種類の突起が備わっています。毛状の突起は大粒の水滴をはね返す機能を、小さな突起は細かな霧状の水滴をいったん表面にとどめ、ある程度の大きさの水滴にまとめて効率よく除去する機能をもち、全体でこれら二つの機能(二重濡れ性)を併せ持つことがわかっています。
 こうした性能を持つテングシロアリの羽の表面構造を、人工的に再現しようとする研究が進められています。使用するのは、紫外線を当てると針状の結晶を生成する光応答性化合物、ジアリールエテンです。テングシロアリの羽の表面の2種類の突起とほぼ同じ大きさの針状結晶を生成できる2種類のジアリールエテンを混ぜ、紫外線を照射すると、テングシロアリの羽と似た「二重濡れ性」を備えた表面構造を再現しました。

大気中の水分を集めるシステムへの応用

 この表面構造を型取りし、ポリマーなどの安価で安定した材料に転写して、より大きな表面積を持つ形で量産できると、霧などの大気中の水分を効率よく集めて真水を作るシステムへの応用が考えられます。海水や塩水から真水を生成する従来の方法と違って、テングシロアリの羽の表面構造を応用したこの手法は、大気中の水分を自然に集められるので、エネルギーを必要としないというメリットがあります。
 将来、世界各地で重要な課題になると言われている水不足を、テングシロアリの羽の秘密の構造が、解決してくれるかもしれません。

参考資料
1:生物の不思議を光で再現する
2:化学

この学問が向いているかも 有機機能材料化学、応用化学、光化学

龍谷大学
先端理工学部 応用化学課程 教授
内田 欣吾 先生

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先生がめざすSDGs
メッセージ

 研究の世界では、表に出てくる結果の裏側に膨大なデータの収集と解析や数式計算があります。こうした地道な作業を繰り返していく姿勢が大切です。また、研究者にとって自然への理解も不可欠です。私がハスの葉がもつ超撥水性(ちょうはっすいせい)に着目したのは、実際にハスの葉を見に行ったことがきっかけです。つまり、研究は自然の延長線上にあるのです。
 自然と同じ高度な機能を再現することは難しく、苦労する面もありますが、人間にはなかなかまねのできない自然のすごみを理解できることがこの研究の魅力です。

先生の学問へのきっかけ

 自然界の動植物の構造からヒントを得て、新しい素材を開発する研究をしています。例えば、ハスの葉の水をはじく撥水性能や、カタツムリの殻の水に濡れやすい親水性能を、光に反応する物質を使って再現し、新たな工学的機能性を作り出す研究です。2006年に私の研究室の学生が、ある材料に光を当てると水をはじく性質を発現させたことをきっかけに、ハスの葉の構造を再現する研究をスタートし、数多くの論文を学会や科学雑誌で発表するなど、活発な研究活動を続けています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大学教員/国立研究機関研究員/製薬会社研究員/総合化学会社研究員/色素関連企業開発職/高校教員

研究室
大学アイコン
内田 欣吾 先生がいらっしゃる
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 『進取と共生』〜世界に響きあう龍谷大学〜
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 その歴史は、江戸時代初期の寛永16年(1639)、京都・西本願寺に、仏教の研究と人材養成のための「学寮」が設けられたことに始まります。
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