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講義No.10717

〈都市地理学〉の視点でオーストラリア多文化社会を読む

日本のフィリピン人社会と地域社会の変化

 日本には2020年時点で約28万人のフィリピン人が生活しています。そのうちの約7割が日本人男性との結婚などで定住する女性たちです。1990年代頃までは、エンターテイナーとして来日し、半年程度で帰国する人も多かったのですが、国際結婚を通じて長く滞在するフィリピン人女性が増加すると、住民として日本の地域社会と関わり合って暮らしていくこと、つまり多文化共生の必要性が生じました。名古屋市の都心部である栄周辺にも働くフィリピン人女性が多く暮らしていますが、2000年代に入ると、そこにフィリピン人を支援するボランティア団体が設立され、日本の地域社会とフィリピン人コミュニティとの間で多文化共生のまちづくりが始まりました。

オーストラリアのフィリピン人社会

 一方、オーストラリアにもフィリピン人が多く暮らしています。オーストラリアは人手不足を補うために外国人労働者に頼ってきたため、英語を得意とするフィリピン人にとって、性別を問わず移住しやすい国の1つです。1980年代は日本と同じようにオーストラリア人男性との結婚を機に入国する女性が主でしたが、次第に家族を本国から呼び寄せたり、留学生が増えるにつれて男性の比率も高まりました。フィリピン人をはじめとする移民の多くは、シドニーやメルボルンのような大都市圏の特定地域に集住しており、日本とは比較にならないほど多文化社会の現実を生きています。

多文化社会の日豪比較

 日本は2020年時点で在住外国人の比率が2%強にすぎず、いまだ日本人が圧倒的マジョリティの国です。そのため多文化共生を語るときは、マイノリティである外国人を日本社会に溶け込ませようというニュアンスが含まれがちです。しかし、例えば家賃が安い県営住宅などでは、すでに外国人住民が多く暮らし多文化社会が生まれています。文化の異なる人々が対等な立場で協力しあいながら1つの地域社会を作っていくうえで、多文化化が進むオーストラリアの研究は、日本の未来の試金石になるでしょう。


この学問が向いているかも 人文地理学

愛知教育大学
教育学部 人文社会科学系 社会科教育講座 准教授
阿部 亮吾 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 私たちを取り巻く社会とはいったい何か、そして私たちがその環境をどう変えていくことができるのかなどに興味を持ってもらいたいです。新聞に載るような大きな出来事だけでなく、ふだん生活している街に目を向けることも大切です。たとえば道路は誰が作ったのか、地形の特徴はどうかなど、自分の周囲の社会や空間に疑問を持ちましょう。あなたの目に入ってくる景色を当たり前に思うのではなく、疑問を重ねていくと見るべきものや調べるべきものがわかってくるはずです。こうした視点を持つと毎日がよりおもしろく感じますよ。

先生の学問へのきっかけ

 もともと父親が地理学者で、幼い頃から地理に親しんでいて、小学校低学年の頃には世界地図を暗記したり、日本以外のどこか遠くに住む人々の生活に思いをはせることが好きでした。学部生の頃は都市景観を研究していましたが、大学院生になって日本に住む外国人労働者の空間にも興味を抱くようになりました。名古屋市の都心部に形成されたフィリピン人の働く場所に異空間を見出したことがきっかけです。今は、オーストラリアで生活するフィリピン人の暮らしを日本とも比較しながら、都市における多文化社会の成立条件などを研究しています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

教諭(小・中・高等学校)/公務員/旅行会社

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阿部 亮吾 先生がいらっしゃる
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 国立大学法人愛知教育大学は、教員養成を主軸とする教育学部1学部からなる教育系単科大学です。
 国立大学の教員養成課程の卒業生の教員就職者数・率は、毎年トップクラスを維持しています。
 また、環境重視型のエコキャンパスの創造に取り組んでおり、全国にある教職員数500人以上の国立大学60大学中、愛知教育大学は、2006〜2007年度の床面積及び一人あたりエネルギー使用量が最も少ない大学として評価されています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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