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講義No.10704

自然に学ぶ「クスリ」つくり

天然物を利用した有機合成

 有機合成は、健康食品や薬品、農薬などの開発・製造に不可欠な技術です。特に、機能が明らかな自然界の有機物質は、長年利用され安全性が確保されているため、食品や薬品に安心して使用できます。しかし、問題となるのはコストです。自然物から抽出できる有効成分の量は少なく、費用も高価になるため、製品の開発や販売が難しいのです。そこで有機化学では、天然物と同じ構造のものを合成して、安く提供しています。

お茶やミカンの皮に含まれる有効物質を合成

 例えば、お茶から抽出できる「カテキン」という物質は、脂肪の吸収を抑制したり、血中のコレステロールを吸収して血糖値や血圧を下げる機能や、発がんや腫瘍(しゅよう)の増殖を抑える機能があります。このカテキンは製品もすでに市販されていますが、有機合成ではカテキンを蛍光物質とつないで光らせる技術も開発したり、さらに効率的ながん検診であるPET検査を行うことでネズミの中での動きを見ることが可能になりました。
 また、ミカンの皮に含まれる「ノビレチン」という物質は、アルツハイマー病の予防に効果があります。天然物のノビレチンを抽出するコストは高額なため、研究用途での確保が難しいことが問題でした。しかし、有機合成することで価格が20分の1以下になり、これを用いた多くの研究が進展しました。

有機合成が医療や農業などの産業を発展させる

 植物の生育でも有機合成が役立っています。芝の病気「フェアリーリング病」は、芝生がリング状もしくは線状に大きく成長した後、キノコ類が発生して芝が枯れてしまいます。原因はコムラサキシメジというキノコですが、この菌糸体を分離・培養したところ「アザヒポキサンチン」を含有していました。アザヒポキサンチンには、植物の成長を促す機能があり、これを有機合成によって大量に得て植物の成長を促進する化合物(農薬)が開発されました。このように、天然物の有効成分を人工的に生産する有機合成は、医療や農業などの産業を進展させるために必須の重要な技術なのです。


この学問が向いているかも 天然物化学、有機合成化学、薬学

静岡県立大学
薬学部 薬学科 教授
菅 敏幸 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 私の専門は有機化学による「クスリ」つくりです。もしあなたが「クスリ」つくりの道に進みたいと思ったら、ぜひ高校時代に化学はもちろん、数学や物理の勉強もしてください。というのも、クスリつくりのヒントとなるゲノム(遺伝子)の解析には数学のアルゴリズムが使われています。また、タンパク質の解析を助けてくれる質量分析には波動の知識が必要で、これは物理の領域です。このように、研究・開発の基礎となるさまざまな知識を身につけて、これからの日本のものづくりを支える人材をめざしてほしいです。

先生の学問へのきっかけ

 大学は理学部化学科に入学しました。ラグビーに明け暮れる毎日でしたが、天然物合成の研究室に入り、そこで鍛えられるうちに有機化学が好きになりました。企業の研究所に3年間勤めたのち、大学に戻り薬学部に移りました。最初は薬学にあまり興味はありませんでしたが、仲間と協力して研究するうちにラグビーのチームワークに似ていると思い、薬学が好きになりました。特に、大学のプロジェクトでアルツハイマー病の共同研究の経験が、大きなきっかけです。今はさまざまな研究開発を支える有機合成(ものづくり)に取り組んでいます。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

製薬企業研究者/化学メーカー研究者/食品会社研究者

大学アイコン
菅 敏幸 先生がいらっしゃる
静岡県立大学に関心を持ったら

 静岡県立大学は、5学部9学科を有し、国際化・情報化・高齢化・環境問題という21世紀における最重要課題を展望しつつ、新しい時代を支える有為な人材の育成を目的としています。自主性や公共性を強く意識し、地域社会からの評価を得られるように、大交流時代において選ばれる大学を目指します。研究分野では、文科省のグローバルCOEプログラムに採択され、研究レベルが国内トップクラスといえます。

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