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講義No.10695

がん細胞を狙い撃つ、新しい「放射線療法」の研究

さまざまな医療分野で活用される放射線

 「放射線」と聞いて、怖いもの、避けるべきものというイメージを持つ人が多いかもしれません。確かに、一定量以上の放射線は人体にとって非常に危険ですが、その一方で、人の命を救う医療分野で大いに活用されています。がん治療で行われる「放射線療法」は、その代表格の1つです。
 放射線療法は、放射線の力でがん細胞を殺傷する治療法です。切除手術、抗がん剤投与と並ぶ有効な治療法ですが、体外から放射線を照射するため、いかにがん周辺の正常な細胞に悪影響を与えないようにするかという工夫が必要となっています。そこで現在、がん細胞だけを狙い撃ちする、新しい放射線療法が研究されています。

がん細胞の内部から放射線で攻撃

 化学の教科書で、「ホウ素」という元素を目にしたことがあるでしょう。自然界のあちこちに存在しており、人体への毒性はほとんどありませんが、放射線の1種である中性子線に増感作用を示すという特性があります。
 このホウ素を混ぜた薬剤を血液に注入し、がんの病巣に到達したタイミングで中性子線を放射します。ホウ素に小さな核反応を起こさせて、がん細胞を内部から死滅させるのが、新しい放射線療法の概要です。正常組織に悪影響を与えるリスクが非常に低いので、再発がんや転移したがんに対しても、繰り返し治療することができます。

がんが「怖くない病気」になる日も近いかも

 中性子は、原子核を構成する素粒子の1つで、原子炉内などで利用されています。ただ、治療室内に原子炉を置くことはできないので、病院内に設置できるサイズの中性子発生装置が必要です。また、治療には中性子の中でも適切なエネルギー量のものを選んで使う必要があります。現在、研究用原子炉を持つ大学や核エネルギー関連機関で研究が進められており、複数の病院で治験も行われています。
 日本人の死因として最多のがんですが、新しい放射線療法が実用化されれば、がんで苦しむ人の数がぐっと少なくなることが期待されます。


この学問が向いているかも 原子力工学、核融合学

名古屋大学
工学部 エネルギー理工学科 准教授
吉橋 幸子 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 1つの事柄だけに特化して深く学ぶことも、もちろん意義があることです。しかし、もしもあなたが「ものづくり」の分野に関心があり、将来、ものづくりの研究やものづくり関連の仕事に就きたいと考えているなら、その時々に興味が湧いたことはなんでも調べてみる、学んでみる姿勢を持つように心がけましょう。ものづくりには、いろいろな分野の知識とたくさんの人の協力が必要だからです。「この科目は苦手だから、知識がなくてもイイや」といった考えではなく、いろいろな方面の知識を吸収することが大切です。

先生の学問へのきっかけ

 子どもの頃から、工作や裁縫など、「手を動かして何かを作る」ことが好きでした。高校進学時も「ものづくり」に関わる勉強がしたいと考え、高等専門学校で電気・電子系の制御技術を専攻しました。大学に編入して、電気・電子だけではなくエネルギー全般に関心が湧き、その当時は「これからのエネルギーは原子力」という考えが主流だったため、核エネルギーについての研究を開始しました。電気から核エネルギー、現在は放射線医療技術へと、「ものづくり」の枠の中で、研究の対象を変化させ続けてきたのです。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

原子力発電所放射線管理/製造業技術開発

大学アイコン
吉橋 幸子 先生がいらっしゃる
名古屋大学に関心を持ったら

 名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。

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