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講義No.10675

脳の細胞をつなぐ接着分子~自閉スペクトラム症との関係を探る

細胞をつなぐ接着分子

 「神経化学」とは、体内の物質や分子に着目して脳や心の仕組みを研究する分野です。脳は神経細胞の集合体で、生物が細胞分裂をくり返す過程で少しずつ作られていきます。
 神経や細胞にはそれぞれ役割分担がありますが、お互いをくっつけたり認識したりするものがなければ連携が取れません。このとき働くのが細胞や神経をつないでいる接着分子です。接着分子や、分子に付着している糖鎖は、神経回路の形成に関与しています。しかし遺伝子に異常があると、糖鎖や接着分子が正常に働かなくなる場合があり、精神疾患などの症状が現れると考えられています。

自閉スペクトラム症はなぜ起こる?

 精神疾患のひとつに「自閉スペクトラム症」があります。対人関係の困難と強いこだわりが特徴です。原因はほとんど不明ですが、遺伝子の変化が関係していることがわかってきました。自閉スペクトラム症患者に多い症状が聴覚過敏です。一般的にはそれほど大きくない音でも苦しく感じてしまう場合があります。理性や判断、聴覚などを担う大脳の神経接着分子が聴覚過敏に関係している可能性があるとわかってきました。

聴覚過敏と神経の関係

 聴覚過敏と神経接着分子との関係を明らかにするために、自閉スペクトラム症と同じように遺伝子が変化したマウスの脳波が調査されました。大脳に正常に機能する神経接着分子がないと、周波数が違う音をうまく区別できない、音が出ている方向を判断できない、など聴覚過敏に似た症状が見られました。
 神経接着分子が正常に機能しているとき、耳で聞いた音は周波数ごとに別々の神経回路を通って大脳まで運ばれます。しかし分子に異常が出ると神経細胞の連携がうまくいかなくなるため、周波数を識別することができません。接着分子が異常なマウスには社会性の障害も見られました。このように接着分子や遺伝子と疾患との関係性が明らかになれば、精神疾患を診断するときの助けになるはずです。


この学問が向いているかも 生物化学、神経科学、精神医学

長岡技術科学大学
工学部/工学研究科 生物機能工学専攻 准教授
霜田 靖 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 当たり前だと思うことや、仕方がないと自分を納得させることがあるかもしれませんが、実はそうとは言い切れないのです。あらゆる物事は当たり前に起こるのではなく、その結果をもたらす理由が隠されています。「なぜそうなるのか」がわかれば、結果をよりよくすることも、原因そのものを変えることもできるかもしれません。
 だからこそ、身の回りの出来事や心の動きに対して、「なぜだろう」と日ごろから考えるようにしましょう。こうした疑問はあなたが大学に進んだとき、新しい考えや解決策を見つけるきっかけになるはずです。

先生の学問へのきっかけ

 中学・高校時代、「どうして異性のことが気になるのか」と疑問を抱きました。脳や心は誰かを好きになるように仕組まれていて、自分はその仕組みに突き動かされているのではないか、と思いました。その答えを見つけるために、神経化学の研究に携わっています。
 遺伝学が進歩すると、次第に精神疾患と細胞のつながりが提唱されるようになり、私も現在は自閉スペクトラム症における接着分子と脳の働きを研究しています。心がうまく働かない原因を探ることが、普段の心の仕組みを明らかにする手がかりになるはずだと考えて取り組んでいます。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

医薬品製造会社開発/バイオ系出版社編集

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霜田 靖 先生がいらっしゃる
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 長岡技術科学大学は、大学院に重点を置き、実践的な技術の開発を主眼とした教育研究を行う工学系の大学として、新構想のもとに設置され、実践的・創造的な能力を備えた国際的に通用する指導的技術者・研究者の養成を行い、これらを通じて社会との連携を図ることを基本理念としています。
 大学はまた、勉学の場であると同時に人間形成の場でもあります。美しい豊かな自然に恵まれた環境と、国内はもとより世界の各地から集う学生たちが豊かな人間性を養い、創造性とチャレンジ精神を求め、友情を育む潤いのある大学生活の場があります。

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