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講義No.10660

海の砂漠の謎に迫る!

「海の砂漠」の謎を解く

 亜熱帯域の海は植物プランクトンが少なく、「海の砂漠」と呼ばれています。これは植物プランクトンの成長に欠かせない窒素、リン、ケイ素などの栄養塩が枯渇しているためです。植物プランクトンは光合成によって二酸化炭素を取り込むため、大気から海への二酸化炭素吸収を助けています。亜熱帯海域の植物プランクトンの光合成は大気中の二酸化炭素増加による地球温暖化の進行を抑える役割を担っていますが、光合成を支える栄養塩供給のメカニズムについてはよくわかっていません。そこで栄養塩と植物プランクトンの相互関係に着目した研究が盛んに行われています。

高感度分析での調査

 亜熱帯海域では表層の栄養塩が常に枯渇していると考えられていましたが、LWCC法という高感度分析システムで調べると、ごく微量の栄養塩が残存し、変動していることがわかってきました。この方法では従来検出できなかったナノモルレベルの栄養塩濃度を検出できます。観測船を使った大規模な調査の結果、房総半島沖では栄養塩の一種であるリン酸塩が枯渇しているものの、ハワイに近づくにつれリン酸塩濃度が高くなっていることが明らかになりました。

栄養塩が枯渇した理由は?

 大規模なリン酸塩枯渇の原因として、日本周辺の海に生息する窒素固定生物の働きにより、リン酸塩が使い尽くされたことがわかってきました。また、窒素固定生物はアジア大陸から大気経由で供給される黄砂などの塵に含まれる鉄分を使って繁茂していることもわかりました。しかし現在、窒素固定生物はリン酸塩枯渇下においても生存しており、窒素固定生物へのリン供給メカニズムについては未だ不明点が残されています。さらに地球温暖化の影響で栄養塩を豊富に含む深層水と表層水が水温差の影響で混ざりにくくなってきています。今後、貧栄養化が進行し海の砂漠が拡大していくことが予想されており、栄養塩と植物プランクトンの相互関係のメカニズムを早急に解明することが求められています。


この学問が向いているかも 海洋環境科学

東京海洋大学
海洋資源環境学部 海洋環境科学科 准教授
橋濱 史典 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 研究室といえば実験器具の置いてある部屋を思い浮かべるかもしれませんが、海洋環境学にとっての研究室は海です。船を出して海水を採取したり、生き物を調べたりするうちに、まだ誰も知らなかったことがわかってきます。すると次の疑問が生まれ、研究したいテーマが浮かんできます。
 調査のために船に乗るなど、個人ではできないことも実践できます。船酔いは徐々に慣れると思いますし、研究への緊張感が芽生えると船酔いを忘れて集中できます。海の中や地球環境に興味があるなら、ぜひ大学で一緒に研究しましょう。

先生の学問へのきっかけ

 子どもの頃から海が好きでした。大学での卒業論文の研究で、南極海の植物プランクトン色素を分析しました。研究を進めるうちに海中の植物プランクトンに興味がわき、大学院では現場の海洋環境と植物プランクトンの生態について学ぶことにしました。特に海の砂漠と呼ばれる亜熱帯海域には顕微鏡では見えない小さな植物プランクトンが多く、種類を特定するときに色素分析が役立ちました。これまで培った知識が生かせますし、調査に使う機器開発では大好きなものづくりにも関わることができるため、海洋環境の研究に楽しさを感じています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

官公庁/環境アセスメント/水産/食品/教諭/放送局

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橋濱 史典 先生がいらっしゃる
東京海洋大学に関心を持ったら

 国公私立大 合同進学オンラインイベント「夢ナビライブ2021Web in Autumn」に、橋濱 史典 先生が参加! 先生の講義ライブ動画を10月31日(日)までオンデマンド配信するほか、Zoomで先生に直接質問ができる「講義ライブ質問対応・研究室訪問」を10月2日(土)に実施。夢ナビライブは、600名以上の大学教授や200近い大学がさまざまなプログラムを実施する大型オンラインイベントなので、まずは「夢ナビライブ」で検索してください。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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