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講義No.10648

観光やリゾートだけではない、ミクロネシアの本当の姿とは

南洋の島々は「パラダイス」なのか

 パラオやサイパン、グアムなどミクロネシアの島々は観光リゾートとして有名です。島々はパラダイスのようなイメージで宣伝され、日本からも多くの観光客が訪れます。また、少し前までは日本語を話せる年長者が多くいたため、親日家も多いなどと言われてきました。しかし、このようなイメージは一面的で、実際の姿とは違います。観光客に対して好意的である一方で、人々は太平洋戦争を含めて過去の歴史に対して複雑な思いを抱いています。

日本統治時代のミクロネシアの姿

 第一次世界大戦後、日本は旧ドイツ領ミクロネシアを南洋群島として統治するようになりました。流暢な日本語を話す年長者が多いのは統治下で日本語教育が行われていたからです。また、統治政策の一環として、多くの日本人が移住し、現地の人々よりも多くなっていきました。学校や病院、役所などができ、農業や漁業なども発展しましたが、現地の人々は安価な労働者として搾取されるだけでした。ミクロネシアの人々は日本国籍を与えられず、日本人と同じ権利がなく、さまざまな差別を受けました。太平洋戦争の戦場となり甚大な被害を受けましたが、戦争当事国ではないミクロネシアの人々は、十分な補償を受けることもできていません。

伝統的生活からグローバルな世界へ

 元々ミクロネシアには中央集権的な王は存在せず、小規模でゆるやかな政治的まとまりがありました。人々は、漁労と根栽農耕で暮らしていましたが、遠洋航海で結びつく島々もありました。しかし、欧米や日本に「統治される歴史」のなかで、伝統的生活は変わっていきました。島々の結びつきは分断され、大国の論理で支配に組み込まれました。1980年代以降、独立国家ができていきますが、国内の産業は乏しく、人々はアメリカ合衆国やその海外領土に活路を見いだし、移動していきます。いまさら伝統的な生活に戻ることはできません。大国の都合に翻弄されながらも、グローバルな世界で生きている人々の現実が、パラダイス・イメージの裏にあるのです。

参考資料
1:パラオの村の高台から海を望む
2:パラオの村の夕暮れとボード

この学問が向いているかも 文化人類学、オセアニア研究

高知県立大学
文化学部 文化学科 准教授
飯髙 伸五 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 文化人類学は他者と出会うことの面白さを教えてくれます。そこから視野が広がり、不確かさや偶然の重要性が分かります。しかし、高校の勉強はまず知識を学ぶことが中心になり、どうしても特定の分野に限られているため、そのような経験はなかなかできません。
 そこであなたには、こんな人やモノに出会いたい、こんな場所に行きたいといった具体的な他者へのアプローチに関心を持ち、実践してほしいです。そのような経験は、単に知識を得るだけでなく、生きる知恵や自信を持つことにもつながります。ぜひ、挑戦してみてください。

先生の学問へのきっかけ

 文化人類学を学んで異文化に興味を持ち、ミクロネシアの伝統的首長制や母系的社会の研究を始めましたが、フィールドでの出会いから、日本とパラオの関係にも関心を持つようになりました。約2年間生活を共にしたパラオの家族のおばあさんは、太平洋戦争以前、日本語を学び、日本人経営の病院で働いていたため、日本語が堪能でした。亡くなったご主人は大工の訓練を受けて日本式の家屋を多く建て、戦時中にはニューギニアで軍役をしていました。こうして、日本統治が人々の歴史認識や日本認識に与えた影響を研究するようになりました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

地方公務員/旅行業/輸入品マーケティング/団体職員/映像制作会社/デザイン会社起業

大学アイコン
飯髙 伸五 先生がいらっしゃる
高知県立大学に関心を持ったら

 高知県立大学は、文化学部、看護学部、社会福祉学部、健康栄養学部の4学部で構成しています。高知県は全国と比較して、高齢化で10年、人口減少で15年も先行しています。少子高齢化社会や南海トラフ地震対策など山積する課題を乗り越えて、未来の社会をどう形成するかに、学生と教職員は真剣に取り組んでいます。全学生が地域で活動し、地域の人々とともに学びあう教育に力を入れており、卒業後には、学部で身につけた専門知識を生かして地域で活躍できる人材となることをめざしています。

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