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講義No.10644

医学・薬学にも貢献する「光」の可能性

熱に代わる光エネルギー

 高性能材料や医薬品をつくる際、試薬をフラスコの中で混ぜて加熱することで起こる「熱反応」によって、化学合成を行うことが一般的です。しかし、何かを燃やしてつくる熱エネルギーは、地球の限りある資源を消費します。そこで、熱を使わず化学反応を起こす方法として、光エネルギーに注目が集まっています。まだ途上ですが、光と物質がどのように相互作用し、また光エネルギーの注入がどのように物質の変換につながるのかといった研究が進められています。

「振動励起」と「電子励起」

 熱を使った合成反応は、150度や200度といった高温状態をつくりだし、高い熱エネルギーをかけて分子を振動させる「振動励起」によって起こされます。これに対して、光を使った合成反応では「電子励起」という状態を起こします。ホタルやクラゲが発光するのも、体内で電子励起が起こっているからです。
 可視光は、約400nm(ナノメートル)から800 nmの波長ですが、太陽光の波長はさらに広く、非常に大きなエネルギーをもっています。この大きなエネルギーを効率よく吸収する物質をつくることができれば、原子と原子の結合を切ることができるほどの電子励起を起こすことができます。例えばベランダや窓際にフラスコを置き、太陽光を当てるだけで合成反応を起こす、といったことが可能になるでしょう。

光で薬を制御する

 このような光を使った化学反応を応用して、薬を体の必要なところに運ぶ「光ドラッグデリバリーシステム」という技術の開発も進められています。例えば抗がん剤はがん以外の部分にも作用して、強い吐き気や抜け毛といった副作用を引き起こします。抗がん剤をカプセルで覆い、光を使って狙ったところでカプセルを破り、そこだけに抗がん剤が届くようにできれば、患者の体への負担が少なくなります。さらにこれを応用すれば、記憶や睡眠も自在にコントロールできるようになるかもしれません。光には、それほど大きな可能性が秘められているのです。


この学問が向いているかも 有機化学、光化学、薬学

広島大学
理学部 化学科 教授
安倍 学 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 若いあなたには、新しいことにトライしてたくさんの寄り道をしてほしいと思います。新しいことにトライすることで、真っすぐ歩いた道で発見できることに加えて、異なる新しい発見があり、より柔軟な考え方・見方ができるようになります。物事を斜め横などから見ることができれば、真正面から見えていることとは異なる発見があり、それがやがて大きな突破口にもつながります。
 より多くトライできる環境とは、より多様で高い教育が実践されている場所だと思います。そうした場所に身を置いて、新しくてより開けた未来をめざしてください。

先生の学問へのきっかけ

 中学生の頃、福井謙一先生が日本で初めてノーベル化学賞を受賞されたニュースを聞いたことが、化学に興味をもちはじめたきっかけです。また父親が化学薬品を取引する企業に営業職として勤めていた影響も大きいと思います。大学受験の際にも、福井謙一先生が学長を務められていた大学を選びました。そして進学後は、当時は今ほど研究されていなかった光を使った化学反応に着目し、研究の道に入りました。現在は、医療分野での貢献をめざし、医学・薬学と連携した「光ドラッグデリバリー研究拠点」の拠点長としても活動しています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

科学者(大学)/教諭(高校)/市役所(環境計画)/総合化学メーカー研究員

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安倍 学 先生がいらっしゃる
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 広島大学は社会に貢献できる優れた人材を育成し、科学の進歩・発展に貢献しつつ、世界の教育・研究拠点を目指す大学です。緑豊かな252ヘクタールという広大な東広島キャンパスを抱え、また、国際平和文化都市である広島市内等のキャンパスを含め、12学部、11研究科、1研究所、大学病院並びに11もの附属学校園を有しています。 新しい知を創造しつつ、豊かな人間性を培い、絶えざる自己変革に努め、国際平和のために、地域社会、国際社会と連携して、社会に貢献できる人材の育成のために発展を続けます。

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