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講義No.10641

したたかに生きていたオスマン帝国の遊牧民

遊牧民の実際の姿を明らかにする古文書

 13~20世紀の間、最大版図では中東と北アフリカ、バルカン半島を支配したオスマン帝国は、遊牧民を含む多民族・多宗教・多文化社会でした。遊牧民たちはどのような生活をし、国家とどのような関係を結んでいたのでしょうか?
 これを明らかにするには、古文書、今で言えば国勢調査や国への要望書のような古い役所の記録を読み解く必要があります。国家は、人々の反乱を防止し、税金を徴収するために記録を残していました。その記録の中から、遊牧民の実際の姿が明らかになってきます。

支配されるだけではない、したたかな遊牧民

 遊牧民というと、チンギス・ハンが創建したモンゴル帝国のような強大な力を持つ騎馬民族や、逆に国家に抑圧され伝統文化や遊牧を捨てざるをえなかった民衆を想像するかもしれません。しかし、古文書を読むとそうではないしたたかな遊牧民の姿が見えてきます。彼らは必ずしも遊牧だけをしているわけではなく、環境がよければ村を作り定住していました。古文書には、どこにどの遊牧民がいて、何を生業としているかが定期的に記録されています。それをもとに何を税金として徴収するかを決めていたのです。一方、遊牧民は言われるままに税金を納めていたわけではなく、税金の免除や軽減の交渉を行うこともありました。オスマン帝国が領土を広げる過程で、軍隊に物資を提供するかわりに税金を免除してもらうなど、交渉術に長けた人もいたのです。

支配者の記録から遊牧民の考えを類推

 このような「特権」は一時的なものではなく、その後長期にわたって交渉の道具になりました。支配する側も反乱防止のためにそれを利用する場合もありました。オスマン帝国は、イスラム教の枠に入っていれば民衆に対して寛容だったと言われており、そのような姿が古文書からもわかります。
 ただし、古文書は支配者側が記録したものであり、遊牧民の考えていたことが書かれているわけではありません。一方的な視点であるため、史料から遊牧民の実際の姿を類推し検証する力が求められます。


この学問が向いているかも 歴史学、オスマン帝国史学、遊牧民学

長崎大学
多文化社会学部 多文化社会学科 准教授
岩本 佳子 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 インターネットの発達で、現代はさほど努力しなくても多くの情報が入ってきます。このような環境では、情報を批判的にとらえることが重要です。批判というのは悪口ではなく、相手の意見を素直に一度は受け入れて、その中で違和感や疑問を持ってその意見を検証することです。例えば中東をめぐっては「イスラム教とユダヤ教の千年以上続く宗教対立」という言われ方がされますが、実は両者が共存していた時代もあります。
 嘘やデマも容易に広がるようになってしまった情報化社会を生き抜くために、あなたも批判的思考をぜひ身につけましょう。

先生の学問へのきっかけ

 中高生のときはマンガやアニメが好きでした。当時流行っていた『エヴァンゲリオン』には天使の名前がついた敵が出てきます。天使が好きだった私は、イスラム教にも天使がいることを知り、イスラム教関連の本を読むようになりました。大学ではイスラム教への興味から中東の歴史が勉強できるゼミを選びました。研究では言語力が必要になりますが、勉強した中で最も性に合ったのがトルコ語でした。そこから、この言語の史料が多いオスマン帝国の研究を行うようになりました。特にオスマン帝国に支配される側であった遊牧民を研究しています。

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 長崎大学は、出島を介した『勉学の地』としての誇りと『進取の精神』を受け継ぐとともに、宗教や科学における非人道的な負の遺産にも学び、人々が『平和』に共存する世界を実現するという積極的な意志の下に教育・研究を行います。そして、蓄積された『知』を時代や価値観を越えて継承し、人類を愛する豊かな心を育て、未来を拓く新しい科学を創造することによって、地域と国際社会の平和的発展に貢献します。

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