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講義No.10529

動物が自然環境の中で適応するために重要な脳での情報処理

動物は刻々と変化する自然環境の中で生きている

 動物は、それぞれの生存に適した自然環境の中で生きています。しかし、その自然環境も、一定ではありません。餌や天敵といったほかの生物との関係も刻々と変化しています。したがって、環境の多様な情報の中から重要な情報を取り出して、行動として適切に出力することが、生きていくためには重要です。脳は、このような情報処理を行っています。この脳の構造や働きは、遺伝子によってプログラムされています。しかし、遺伝子だけでその働きが決まっているわけでもありません。

「忘れさせる」遺伝子と神経細胞

 私たちは、いつの間にか忘れているという経験をいつもしています。ですので、「忘れる」というのは受動的な過程であると何となく思っているかもしれません。実際、生物学の世界でも、10年くらい前まで、そのように考えられてきました。しかし、遺伝子に異常があって「忘れることができなくなった」動物が見つかりました。この遺伝子の働きから、「記憶を忘れさせている細胞」があって、「記憶を忘れなさい」というシグナルをだしていることがわかりました。「積極的に記憶を忘れさせる仕組み」があって、それが遺伝子にプログラムされていることになります。しかし、その仕組みがいつ使われるかは、環境によって変わってくるということもわかってきました。つまり、遺伝子によるプログラムと環境との相互作用によって、情報処理も変わってくるということです。

遺伝子を使って動物の脳での情報処理をのぞき込む

 脳の活動をすべて見ることができれば、情報処理の仕組みはわかるかもしれません。そこで、脳にある神経細胞の活動を可視化する手法が開発されました。蛍光タンパク質の遺伝子を神経細胞だけで働かせて、特殊な顕微鏡で観察します。線虫という1mmほどの小さな動物を使って調べると、脳の全ての神経細胞の活動を一度に測定できます。機械学習を使って神経細胞の活動を調べると、個体ごとに情報処理が大きく異なっていることがわかってきたのです。


この学問が向いているかも 神経科学、分子生物学、遺伝学

九州大学
理学部 生物学科 教授
石原 健 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 進路を決める時には、自分自身で良く考えて判断することが大切です。自分がやりたいこと、自分が得意なこと、将来有望だと思うこと、それぞれが違っていて当然です。また、その考えは将来変わっていくこともあると思います。関連した書籍を読んだり、先生やご家族、友人などに相談したりすることは必要なことですが、あなたの人生ですから、最後は自分自身で責任をもって判断してください。もし一つに決められなければ、将来の可能性が広い道を選択して、進路を決める次のチャンスまでによく考えるという選択肢もあるかもしれません。

先生の学問へのきっかけ

 私は、暗記と生き物がとても苦手な生物学者です。大学には化学を志して入学しましたが、授業すら受けたことがなかった生物を受講したら、ほとんど化学の話でした。その時初めて生物学に興味を持ちました。その後、化学から生物化学、生物学へと少しずつ興味が移っていきました。大学院の途中からは、中枢神経を対象とした遺伝子の働きの研究を始めました。今は、遺伝子の働きと顕微鏡とを組み合わせて、動物の心をのぞいて、「考える仕組み」を明らかにしようと研究を進めています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

食品メーカー研究員/大学教員/国立研究所研究員/IT企業開発/飲料会社総合職

研究室
大学アイコン
石原 健 先生がいらっしゃる
九州大学に関心を持ったら

 九州大学は、教育においては、世界の人々から支持される高等教育を推進し、広く世界において指導的な役割を果たし活躍する人材を輩出し、世界の発展に貢献することを目指しています。また、研究においては、人類が長きにわたって遂行してきた真理探求とそこに結実した人間的叡知を尊び、これを将来に伝えていきます。さらに、諸々の学問における伝統を基盤として新しい展望を開き、世界に誇り得る先進的な知的成果を産み出してゆくことを自らの使命として定めています。

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