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講義No.10528

「貧困の連鎖」を断ち切るためには

「貧困」とは何か

 貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」があります。日本で問題となっているのは、国内の生活水準を目安にした相対的貧困です。一方、開発途上国では、最低限の生活水準すら維持できない絶対的貧困が問題となっています。SDGsでは、絶対的貧困の撲滅が目標に掲げられています。人間開発の観点から見ると、貧困とは人間として尊厳を持って生きる機会や選択肢を持たないことです。所得以外にも教育や健康などが関係しています。特に子どもがこれらへのアクセスを阻まれると、世代を越えて貧困の連鎖が続きます。

健康・教育への投資で貧困を改善

 例えばケニアやバングラデシュでは子どもたちの栄養状態が悪く、おなかの中に虫(寄生虫)がいる、低体重・低身長の子が多いといった問題があります。そのため、虫下しの薬を子どもたちに与えると、その子どもたちは将来20%も多く稼げることがわかりました。世界の国々のデータでも、健康と所得の間には強い関係が見られます。
 また、子どもの教育の量や質が上がれば、子どもの将来の所得が増えることは、さまざまな研究からわかっています。一例として、インドネシアの小学校建設プロジェクトでは、子どもの通学年数が1年増えるごとに、賃金が8%上がることがわかりました。そうした子どもの教育への投資は、早ければ早いほど効果的です。

プロプア政策が重要

 絶対的貧困を解決するために、1980〜90年代頃までは市場改革で経済状態を改善させる方法が主流でした。しかし貧困削減に効果がなかったため、直接貧困層をターゲットに、例えば児童労働削減や子どもの教育促進のため学校で給食を提供する、子どもを学校に通わせると保護者にお金を渡すなどの「プロプア政策」が実施されるようになりました。
 貧困の連鎖を断ち切るためには、大人だけではなく、子どもたちへの投資が特に重要です。税金を幼児教育に投入した場合、子どもたちは将来の選択肢をより多く持つことができ、よりよい人生を歩めるだけでなく、国の将来の税金収入も増加するのです。


この学問が向いているかも 開発経済学

明治学院大学
経済学部 経済学科 教授
大村 真樹子 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌスは「貧困は文明社会に存在するのではなく、博物館に陳列されているべきものだ」と言っています。しかし貧困はいまだに世界中に存在します。人は生まれてくる場所を選べません。途上国の貧困問題は、別世界の出来事ではないのです。
 貧困の現状を理解し、人々が貧困の罠から脱却し、自ら人生の選択肢を持ちうるような社会制度や政策を考える学問が開発経済学です。あなたも途上国の貧困問題を自分の問題と感じられるなら、より多くの人が幸せになれるよう、問題解決に向けて一緒に取り組みましょう。

先生の学問へのきっかけ

 子どもの頃住んでいたブラジルは貧富の差が激しく、貧民街や貧しい子どもたちを日常的に目にしていました。同じ人間として生まれて、なぜこれほど格差があるのかと疑問を感じ、大学では社会構造や人々の行動を読み解く経済学、更に開発経済学や環境経済学を学びました。修士課程の後、国連機関に勤めカンボジアに赴任しました。当時のカンボジアでは政情不安の中、貧富の格差が急速に拡大していく様子を目の当たりにしました。開発現場に残りたい気持ちもありましたが、大学院に戻り、貧困や環境などの開発問題について研究してきました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

保険・金融/情報通信/交通・航空業界/開発コンサルタント/人材コンサルタント/公務員/大学院進学

研究室
大学アイコン
大村 真樹子 先生がいらっしゃる
明治学院大学に関心を持ったら

 150年以上もの歴史を持つ明治学院大学。本学の起源は、1863年にアメリカ人宣教医師ヘボン博士が開設した英学塾から始まります。無償で診察を行いながら、英和・和英辞典を編纂し、ヘボン式ローマ字でも有名なヘボン博士。その信念「Do for Others」を教育理念とし、本学ではグローバル社会に対応できる学術知識と教養を培い、他者とともに道を切り開ける人材を育成しています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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