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講義No.10426

DNA分析を通して知る水中の生き物の多様性と進化のストーリー

同じようで違う生き物

 水の中で暮らす生き物たちは自由に水中を行き来しているように見えますが、海域や水系ごとに隔離されていることが多いです。例えば、アゴハゼという魚は日本沿岸に普通に見られますが、日本海側と太平洋側の集団間では遺伝子がはっきりと異なっています。また違いはわからないけれど実は別種という例もあります。日本全国の干潟に生息するあるカニには、同じ場所に暮らしていて姿形にもほとんど違いはありませんが、互いに交配しない2つの種が含まれています。このような地域による遺伝的な違いや互いに似ているけれど実は別種といった関係は、肉眼では捉えることが難しいですが、DNAを調べることで明らかにできます。

PCR分析

 生物集団の遺伝的な違いや進化を調べる研究は、1980年代後半に登場したPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術によって大きく発展しました。微量なDNAをPCRによって数千万倍にコピーできるため、遺伝子の塩基配列を正確に読むことができます。また、組織のほんの一部を採取すれば良いので、生物を殺さずにすみます。さらに最近では「環境DNA」といって、水の中に漂っているDNAの塩基配列を調べ、そこに生息する生物種を推定できるようにもなっています。

遺伝的多様性と生物の保全

 遺伝的多様性とは種内に存在する遺伝的な違いです。集団中に見られる違いと、地理的に隔離された集団間の違いの2つの側面があります。地理的に隔離された集団間の違いは、最初は小さなものであっても時間の経過とともに大きくなり、将来的には別種にまで進化する可能性があります。現在、地球上に見られる膨大な数の種は多くの場合このようにして生まれてきたと考えられています。遺伝的に違いのある個々の集団は現在同種であっても、将来的には新たな種の創出(種分化)に繋がる可能性を持っていると言えます。生物の保全というと人間の利用に焦点を当てた「持続可能性」をイメージしますが、個々の集団が別の種に進化する可能性を保障するという側面もあるのです。


この学問が向いているかも 分子生態学、保全遺伝学

東北大学
農学部 生物生産科学科 海洋生物科学コース 教授
池田 実 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 私は生物の遺伝的多様性について研究しています。個体と個体、集団と集団、種と種の違いは、私たちのような専門家でなくても、外見から判断することができます。そうした違いを目にしたときに感じる驚きや、「どうしてこんな違いがあるのだろう」と不思議に感じる気持ちを、ぜひ大切にしてください。
 小さな違いに気づき、その違いに基づいて対象を類型化して考えるといった思考は、生物の分野だけでなく、幅広い学問に役立つはずです。

先生の学問へのきっかけ

 子どもの頃から昆虫や両生類、爬虫類といった小さな生き物が大好きで、大学では好きなことを研究しようと生物学科に進みました。生物の進化について興味をいだき、ゴカイという生き物について研究しました。当時はたんぱく質を使った研究が主流でしたが、時代とともにDNA解析をとりいれるようになり、海や川に生息する生き物を遺伝子レベルで解析し、進化の背景を明らかにしてきました。水産生物の遺伝的多様性や保全などの研究のかたわら、学生たちと海や川に出かけてはさまざまな生き物に触れ、自然環境の保全にも力を入れています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大学教員/国立研究開発法人水産研究所・研究員/都道府県水産試験場研究員/食品会社研究開発/中学・高校教員

大学アイコン
池田 実 先生がいらっしゃる
東北大学に関心を持ったら

 建学以来の伝統である「研究第一」と「門戸開放」の理念を掲げ、世界最高水準の研究・教育を創造しています。また、研究の成果を社会が直面する諸問題の解決に役立て、指導的人材を育成することによって、平和で公正な人類社会の実現に貢献して行きます。社会から知の拠点として人類社会への貢献を委託されている東北大学の教職員、学生、同窓生が一丸となって、「Challenge」、「Creation」、「Innovation」を合言葉として、価値ある研究・教育を創造して、世界の人々の期待に応えていきたいと考えます。

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