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講義No.10424

細胞の中で磁石を動かし、生物の謎を物理学で解明しよう

細胞を外からコントロール

 私たちの体内にはおよそ60兆個の細胞があります。この1つひとつにDNAが含まれていて、中では微小管という構造体が放射状に伸びて細胞の形を支えています。DNAはこの微小管でつながれていて、細胞分裂では両極にひっぱられて分配されます。この時、うまく分配されないと染色体の数がそろわず、がんなど細胞レベルの疾患を引き起こします。
 そこで今行われているのは、細胞の中に小さな磁気ビーズを注射し、外から大きな磁石を使って微小管を力学的に操作する研究です。現在は薬を使ってがん細胞を殺す治療が行われていますが、もし細胞の中を自由にコントロールできれば、がん細胞を正常な細胞に戻すのも不可能ではなくなります。つまり、物理学による治療という未来が見えてくるのです。

細胞内で行われる綱引き

 実際に細胞の中で磁石を動かしてわかったのは、細胞の中では意外と大きな力が働いていることです。DNAの分配の様子はよく知られていたことですが、どのくらいの力がかかっているのかは実はわかっていませんでした。
 その力を測定すると、細胞の中はすごくアクティブで、たくさんの分子が一斉に押しくらまんじゅうや綱引きをしているイメージです。そのため磁石も数個分くらいでは到底力を加えられず、数十個の力を合わせてようやく動かせることがわかりました。

物理学で解明する生物の神秘

 現在は生物の体内にたくさんの磁気ビーズを入れて組織・臓器に力を加える実験が行われていますが、まだ外からの操作でどの細胞にどう力が加わるかまでは精密に把握できていません。細胞には周囲から力をかけられると反応する性質があり、ある特定の力で病気になったり、逆に病気にならなかったりといった現象が起きます。しかし詳しい解明には至っていません。
 今後さらに測定の精度を上げれば、1つひとつの細胞・分子の働きを把握でき、制御の方法もわかってくるはずです。そうすれば、いずれは体の中で起きているいろいろな謎が解けるかもしれません。


この学問が向いているかも 生物物理学、細胞生物学

横浜市立大学
理学部 理学科 准教授
谷本 博一 先生

メッセージ

 私自身、今振り返って考えてみると、高校までの理科は生物、化学、物理、地学と、はっきりと分野が分かれていて、1つひとつの学問がしっかり完成しているイメージでした。ところが大学では、分野の分かれ目はだんだんぼんやりとしていきます。
 高校までは「わかっていること」を知る場所ですが、大学は「わかっていないこと」を知る場所で、そこがすごく楽しいのです。ただそれぞれの学問の境界線がどこにあるのかを知っておくには、まずは高校できちんと「わかっていること」を学んでおくべきでしょう。今の勉強をぜひ頑張ってください。

先生の学問へのきっかけ

 現在の分野に興味を持ったきっかけは、小学校時代に、両親が毎月購読していた雑誌「ニュートン」を読んでいたことかもしれません。しかし中学・高校と、特にやりたいことが決まらなかったため、大学では、後々に選択肢が広がりそうだという理由で物理学を学びました。ところが続く大学院では物理学が嫌になってしまい、物理からなるべく離れようと生物学を選びました。すると離れたことで逆に物理学の面白さを再確認しました。そうした紆余曲折があったからこそ、現在は物理学と生物学の両方を生かした研究をしています。

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谷本 博一 先生がいらっしゃる
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