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講義No.10390

リンゴは本当に赤くて丸い?美術を通して見る世界と子どもの見ている世界

子どもの絵に心を動かされる理由

 リンゴの絵を描くとき、赤い丸を描いて上の方に茶色の棒をちょこんと足せば、それだけでリンゴであることは伝わります。これは「リンゴは赤くて丸い」という意味(言葉)を私たちが共有しているからです。しかし、実際のリンゴはこんな単純な記号のようなものではありません。よく見ると一つひとつ異なる形状や凹凸があり、赤だけではなく実に多彩な色も見て取れるはずです。私たちが子どもの絵を見て心を動かされるのは、彼らがまだ「リンゴは赤くて丸い」という意味にとらわれておらず、自分なりに見えているリンゴを描くからです。

美術教育の意義

 「私」と「世界(リンゴ)」の間には「リンゴは赤くて丸い」という意味があり、これを取り払うことでしか、本当の世界は見えてきません。多くの人が、学校の美術の授業で良い成績をとるには、作品をうまくつくることが大切であると考えます。しかし、学校や保育における美術(造形)教育の主眼はそこにはありません。意味に頼ることなく世界を見つめ、自分と世界とのつながりを実感すること、それによって人間形成を図っていくことにこそ、美術教育の意義があるのです。

アートベースド・リサーチ

 人間は成長する過程でたくさんの意味(言葉)を獲得し、その意味を通して世界を知っていきます。それはとても大切なことで、世界の大半はそうした意味性によってできあがっています。しかし、この世界のすべての現象を、意味を通して知ることは不可能です。例えばコロナウイルスの感染拡大のように誰も予想できなかったことが起き、明日必ず太陽が昇ると誰も言い切れないのが、この世界のもう一つの側面であるからです。
 近代的な科学の分野からは切り捨てられてきたこうした偶然性を含めて、世界を余すことなく描き出してきたのが美術です。こうした美術のもつ力を基盤にして、この世界を研究しようという研究方法を「アートベースド・リサーチ」といい、美術教育界においても大きな注目を集めています。


この学問が向いているかも 美術教育学、造形教育学

武蔵野大学
教育学部 幼児教育学科 教授
生井 亮司 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 あなたには、誰かがつくった価値や考え方に頼るのではなく、自分の頭や目、体を使って考えて世界を見てほしいと思います。そのためには、いろいろなものを「これは本当かな?」と疑いながら見ていくことが大切です。
 自分なりの見方ができるようになると、周りの世界もぐっと面白く見えてきます。また、私が専門とする幼児教育の世界では、こうした見方を得るということは、子どもがどのような世界を生きているのかを理解するうえで、大きな助けになってくれます。

先生の学問へのきっかけ

 子どもの頃から絵を描いたり、作品をつくったりすることが好きでした。高校卒業後は美術大学に進み、材料の知識を学ぶため金属工芸科に入りました。卒業後、美術予備校の講師になると、生徒たちが絵の腕前だけでなく、美術を通して人間的に成長していく様子を目の当たりにしました。そこで美術教育を改めて学ぼうと、29歳で大学院に入り、美術教育や教育哲学などを専門に研究することになりました。以来、哲学を絡めた美術教育の研究に力を入れる一方、芸術家として彫刻作品の制作にも取り組んでいます。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

保育士/幼稚園教諭/こども園保育教諭/小学校教諭/子どものアート活動に関わる仕事/大学院進学(研究職)

大学アイコン
生井 亮司 先生がいらっしゃる
武蔵野大学に関心を持ったら

 武蔵野大学は、文・理・医療・情報系の総合大学です。2021年4月、「アントレプレナーシップ学部」を新設予定(構想中)。既存の枠にとらわれず、新たな価値を創造していく起業家精神(アントレプレナーシップ)を持った人材を育成します。2020年4月には、文系も理系も専門に活かせる学びができる新しい情報教育がスタート。12学部20学科になる武蔵野大学では、経済学、経営学、法学、文学、国際、語学、教育、薬学、看護、心理、福祉、工学、環境、建築などの学問分野が学べます。

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