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講義No.10364

国境を超えて歴史認識を共有することは可能だろうか

歴史認識問題をいかに解決するか

 日本と中国や韓国との間には歴史認識問題が存在します。過去の事実に対する評価が各国で異なり、それが国家間の対立の原因となっています。国は自分たちに都合がいいように事実を歪曲しがちです。例えば、日中間で起こった南京虐殺事件の評価は日本と中国では大きく違います。また、中国や韓国は日本の歴史教科書の記述に敏感です。これらの問題を解決するためには、歴史認識共有の可能性を考える必要があります。

欧米から始まった「公共史」とは

 欧米では、この問題に対して「公共史」という先進的な試みを行ってきました。これは、研究者など歴史の専門家が一般の人に対して歴史研究の成果をいかに伝えるかを考える学問です。例えば、フランスとドイツは19世紀以来戦争を繰り返していましたが、第二次世界大戦後に和解の努力を行い、2006年に共通の歴史教科書を刊行しました。教育の段階から、お互いの誤解を回避して建設的な議論が行われる環境を作っています。また、ヨーロッパ各地には複数の国が協力した歴史博物館が設立されています。一般の人が、自国中心の歴史の見方から自由になって、多角的に歴史的事実に触れられるようになっています。さらに、評価の高い映画やドキュメンタリー、小説などの一般向け書物を紹介するイベントなどが行われています。

国ごとの歴史認識の隔たりを埋める

 歴史教育は19世紀から始まりましたが、一方で政治は愛国心を高揚させるために歴史教育を利用するようになりました。このことが、国家間の対立を生み出しているのも事実です。そのために、国ごとの歴史認識の隔たりを少しでも埋めることが必要なのです。ただ私たちは、国家間の対立をあおるようなメディアに引きずられがちです。また、自国の優位を強調する内容の方が映画でも書物でも心地よく感じられます。しかし、そこにとどまっていては、歴史認識問題は解決しません。公共史の試みを、日本と中国や韓国のような東アジアの歴史問題解決のためにも、進めていく必要があるのです。


この学問が向いているかも 歴史学

静岡県立大学
国際関係学部 国際言語文化学科 教授
剣持 久木 先生

先生の著書
先生がめざすSDGs
メッセージ

 歴史は暗記物でも、過去の事実の集まりでもありません。イギリスの歴史家E.H.カーは、「歴史は、現在の人が過去に問いかけると答えてくれるもの」と言っています。私たちが疑問をもてば、新しい歴史的事実が浮かび上がるものなのです。
 歴史を学ぶと、物事を長期的な視点で見ることができ、また、ほかの国を知ることで自国を客観的に見ることができるようになります。歴史に関わる書物や映画それに博物館など、入り口はさまざまあります。ぜひ歴史に興味をもって、歴史の面白さを楽しんでください。

先生の学問へのきっかけ

 私は大学でドイツ現代史のゼミに所属していましたが、指導教授が研究休暇で日本を留守にしていた時期に、ドイツ以外の国、とくに第二次世界大戦期のフランスに興味を持つようになりました。当時のフランスについては、戦後長らく、ドイツに占領されたものの「抵抗」していたと言われてきましたが、1970年代になって、実はドイツに「協力」していた実態が、アメリカの学者ロバート・パクストンによって明らかになったのです。私は、それを原書で夢中になって読みました。この経験がなかったら、研究者にはならなかったと思います。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

外資系営業/流通海外駐在/在外公館広報/大学院進学研究者/公務員

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剣持 久木 先生がいらっしゃる
静岡県立大学に関心を持ったら

 静岡県立大学は、5学部9学科を有し、国際化・情報化・高齢化・環境問題という21世紀における最重要課題を展望しつつ、新しい時代を支える有為な人材の育成を目的としています。自主性や公共性を強く意識し、地域社会からの評価を得られるように、大交流時代において選ばれる大学を目指します。研究分野では、文科省のグローバルCOEプログラムに採択され、研究レベルが国内トップクラスといえます。

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