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講義No.10331

海水を冷やしてできる結晶は? 結晶化工学の不思議と可能性

流氷から知る結晶の不思議

 3%の食塩水溶液を冷やすと、何の結晶ができるでしょうか。食塩でしょうか。ここで冬のオホーツク海をイメージしてください。海水は食塩(塩化ナトリウム)を主とした水溶液ですが、海に浮かんでいるのは流氷です。よって質問の答えは食塩ではなく、水の結晶です。
 こうした不思議な性質をもつ結晶の特性を調べ、制御する学問を結晶化工学といいます。物質を結晶にすると非常に高純度になるという特性があるので、結晶化工学はさまざまなものづくりに応用されています。代表的な例は製薬で、全体の約7~8割もの薬が結晶化工学を使ってつくられています。ほかにも、リチウムイオン電池の製造や、廃水から特定の物質を回収する際にも応用されています。

タラコの10億倍!

 たとえ同じ分子でも結晶になるとき、さまざまな形態にわかれます。例えば解熱鎮痛剤のアセトアミノフェン結晶をつくる際も、わずかな形態の違いが効き目の差になって表れます。結晶化のはじめの段階では、1秒間に約10の14乗個もの分子が集まります。1腹のタラコが約10万粒ですから、その10億倍にもなる分子がぎゅっと集まるのです。さらに、分子が前後・左右・上下にきれいにそろわなければ結晶になりません。こうした複雑な特性を踏まえて、狙い通りの構造をもった結晶をつくることが結晶化工学の難しいところであり、それを制御するのが大切な命題といえます。

注射の恐怖から解放される?

 結晶化工学の研究が、今後さらに進むことで、より純度が高く高性能な医薬品をつくることが可能になります。高性能になれば、例えば錠剤の形で服用した薬が腸から吸収され、血液に溶け出すまでのスピードや効率も良くなります。そうなると、現在は注射で投与されている薬が、錠剤でも同じ効果を得られるようになり、患者の負担を減らすことにもつながります。人体に投与された薬物のうち、全身に循環する量を示す指標をバイオアベイラビリティ(生物学的利用能)といいますが、これを高める上でも結晶化工学の発展が欠かせません。

参考資料
1:医薬品の結晶製造に貢献

この学問が向いているかも 結晶化工学

東京農工大学
工学部 化学物理工学科 教授
滝山 博志 先生

先生の著書
先生がめざすSDGs
メッセージ

 私が専門とする「化学工学」は、よく料理に例えられます。どんなメニューをつくるかも大切ですが、材料や火加減、時間を考えてより良いレシピをつくることも大切です。もちろん材料の無駄を無くすことも大切です。
 何かを学んでいく上で「これはなんだろう」と興味をもつことはとても大切ですが、それと同時に「どうすればよいのだろう」という観点ももつようにしてください。そうすることで、ものの見え方が変わり、いつも受けている授業がより楽しく感じられ、自ら創意工夫して学問に取り組む姿勢をもつことにもつながるでしょう。

先生の学問へのきっかけ

 医学や薬学に興味を持っていた私が化学工学の分野に進んだのは、高校時代の恩師の言葉がきっかけです。それは「どんな優秀な医師でも一日に救える命には限りがあるが、画期的な医薬品を世界に多く供給すればもっと多くの人を救える」というものでした。それ以来、化学工学の分野で「何をつくるか」よりも「いかにつくるか」をテーマに、さまざまな研究に取り組んできました。特に力を入れている結晶化工学は、薬を効率よく生産し、多くの人の命や健康を守る上でも欠かせない分野であると考えています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

製薬企業研究員/食品企業研究員/総合化学メーカー研究員

研究室
大学アイコン
滝山 博志 先生がいらっしゃる
東京農工大学に関心を持ったら

 東京農工大学は、自由な発想に基づく教育研究を通し、社会や自然環境と調和した科学技術の進展に貢献し、それを担う人材を育成します。民間機関等と行う大型の共同研究数は全国の大学で第一位です。MORE SENSEを基本理念とし、果すべき役割の大きさ、重さの自覚の上で農学と工学との協働をさらに進展させ、本学の特色を生かした教育、研究、社会貢献、国際貢献を一層前進させるための努力を続けていきます。

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