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講義No.10243

光合成は人工的に再現できる? 光を利用した電子移動から見えてくる未来

光合成を分子レベルで見ると

 植物は、太陽の光を利用して光合成を行い、水と二酸化炭素から酸素やでんぷんを作り出します。植物を構成するタンパク質を分子レベルで観察すると、クロロフィルとよばれる光合成色素分子が光エネルギーを吸収することで、反応がはじまります。このはじめの過程を光励起(れいき)といい、光励起状態にある分子中の電子が、違う分子へと次々に移動していく(これを電子移動反応という)ことで、さまざまな化学反応を段階的に起こしていることがわかっています。

瞬間的に起こる反応

 この電子移動反応は、マーカスという化学者が理論化し、その功績に対して1992年にノーベル化学賞が与えられました。分子が光を吸収して励起状態になるまでの時間は、10のマイナス15乗から12乗秒と非常に速く、その後10のマイナス9乗秒といった時間の中で段階的にエネルギーが低くなり、さらに1,000倍ぐらいの時間をかけて2つの分子の間での電子移動反応が起こります。一瞬の間に起こる電子移動の過程は、もちろんわたしたちの目ではとらえきれません。研究実験では、「時間分解分光測定装置」という、レーザやLED(発光ダイオード)を使用して特定の光を発生させる装置を使ってその過程を観測したりします。

電子移動の仕組みを応用する

 植物をはじめ、生体のタンパク質の中で起こっている光反応を人工的に再現し、応用につなげる研究も行われています。例えば、本来は光合成に関係しないようなタンパク質に、光に反応して電子を移動させる機能をもたせることも可能です。クリアすべき課題は多いものの、一つひとつの過程を分子レベルで再現していくことができれば、例えば植物がないところで、タンパク質を使って酸素を生み出したり、新たな燃料をつくったりすることができるかもしれません。このような研究は、光化学や生体関連化学というような、化学分野の境界的な学問として、大きな役割が期待されています。


この学問が向いているかも 光化学、生体関連化学

奈良女子大学
理学部 化学生物環境学科 准教授
高島 弘 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 私は現在、女子大学で化学を研究しています。男女共学校では、理系クラスに女子が少なく、肩身の狭い思いをしている女子学生もいるかも知れません。女子大の理系学部には、同じ興味や関心をもった女子学生が集まっており、性別を気にすることなくじっくりと勉強に集中できる点が大きなメリットがあります。
 現代では、企業における女性人材の活用が進んでおり、理系分野の知識をもった女性となると活躍のステージはさらに広がります。理系の学問が好きな方は、ぜひ私たちといっしょに勉強していきましょう。

先生の学問へのきっかけ

 生物を構成するタンパク質などの生体分子を対象に、化学的なアプローチを用いた研究を行っています。化学や生物に興味を持ち始めたのは、あなたと同じ高校生の頃です。さまざまな化学反応や体の中の反応について、理論だけでなく実感をもって理解できる点に魅力を感じました。大学は工学部に進んで有機合成を学び、大学院ではタンパク質を化学的に操作して、さまざまな光反応を作り出す研究に没頭しました。自ら手を動かして実験し、新たな物質を合成して、その反応を解析するなど、実体験をともなう研究ができる点こそ、化学の魅力です。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

製薬会社研究開発/自動車メーカー研究開発/電子機器メーカー研究開発/特許庁特許審査官/中学高校理科教員

研究室
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高島 弘 先生がいらっしゃる
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 世界に誇れる文化と歴史に包まれた静かな環境の中で、奈良女子大学は、時代や社会の要請に応え、女性の高等教育機関として、高度な学術研究に基づく教育環境を提供し、自立して社会で活躍できる女性人材を養成しています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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