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講義No.10084

あるユダヤ人女性の手紙を、フランスの「光と闇」から読み解く

どんな文学作品にも劣らないほど胸を打つ母の手紙

 1943年、フランスで書かれた1通の手紙があります。そこにはたどたどしい文字で、「こんなに幼いお前たちを見捨てて行かなくてはいけなくなって、私たちの胸は張り裂けそうです」という内容が書かれています。ユダヤ人の大量虐殺が行われているアウシュヴィッツ強制収容所へと家畜運搬用貨車で送られる直前に、ユダヤ人女性が自分の子どもたちに宛て書いたものです。書かれた状況や歴史的背景を考慮すると、どんな著名な文学作品にも劣らないほど痛烈に胸に迫ってきます。

あこがれの国の光と闇

 フランスは、18世紀以降「自由・平等・博愛」の理念を掲げ人権国家として世界中に文明の光を放ってきました。明治時代の日本にとっても、フランスは学ぶべき高い文明でした。しかし、ほかのヨーロッパ諸国と同様、フランス国内ではユダヤ人への差別や迫害が続きましたし、国外ではアジアやアフリカの国々を植民地化してしまいました。これは、「自分たちは素晴らしい人間観念や文明を持っているのだから、それを世界に広め、共有したい」という高い使命感を抱くフランスのいわば負の側面です。フランスは今でも多くの日本人があこがれる、魅力ある国ですが、このように光と闇の部分を併せ持っていると言えます。

時代や社会と関連づけて文章を読むと?

 文学作品に限らず、冒頭のような手紙や日記、歌謡曲の歌詞、広告のキャッチコピーなど、あらゆる文章は、文化の中にあって他の文章と互いに影響し合っているばかりではなく、時代や社会と深い関わりを持っています。
 個人が意図してつくる「表現」の探求も興味深いですが、時代や社会と密接に関わり合った「表象」を研究することで、新たに見えてくるものがあります。時代や社会と関連づけて文章を読み解くことで、書かれた言葉ひとつひとつが光を放ってくるのです。


この学問が向いているかも 比較文学、比較文化学、国際多元文化学

椙山女学園大学
国際コミュニケーション学部 国際言語コミュニケーション学科 教授
田所 光男 先生

先生の著書
メッセージ

 比較文学という学問は、19世紀末にフランスで誕生した、言語や国の枠組みを越えて文学の国際関係を研究する分野です。例えば人間は、一人で自分の内面を見つめようとしても見えることは限られています。ほかを見て他者とぶつかることで、自分のエゴが壊れて、違った世界に出ることができるのではないでしょうか。
 あなたも比較文学・比較文化学を学ぶことで、複眼的に相対的に物事や世界が見えるようになります。異世界や他者とぶつかり合う経験をたくさんして、ぜひ新しい世界と新しい自分を発見しましょう。

先生の学問へのきっかけ

 私は高校生の頃から西欧や日本の文学を読む中で、後半生をフランスで生きた森有正の「フランスにこそ人間の生きる高い道がある」という考えに出合い、その後の進路を決めました。大学では歴史・政治・経済などを含むフランスの地域研究に取り組みました。ただ、自分のいる日本の社会や文化をよくわからないままフランスを勉強し続けることはできないと思い、比較文学、比較文化学の道に進みました。研究を続ける中で、フランスの「光」とともに「闇」も知り、日々、異世界との関わりの重要さを感じつつ、その出会いを楽しんでいます。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

貿易会社営業/旅行会社ツアーコンダクター/新聞社記者/教員/官公庁国際交流

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田所 光男 先生がいらっしゃる
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 時代をこえて
 自立した女性を育む
 女子総合大学として。
 
 椙山女学園大学の起源は、明治時代に創設された女学校にあります。日本が真に伸展するためには、女子教育を向上させ、女性がもつ力を社会の中で生かすことが不可欠と信じ、時代に即した先進的な学びに取り組んできました。そのスピリットは今に受け継がれています。いつの時代も揺ぎない一人の人間としての価値観を育み、凜と生きるしなやかで逞しい力を養成する女子総合大学ならではの豊かで多様な学びが、ここにあります。

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