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講義No.10061

トンネルの安全を支える避難設備

トンネル火災事故の発生

 国土に山が多い日本では、各都市をトンネルでつなぐことで移動時間が短縮し、輸送力は飛躍的に向上します。トンネルにより、峠を越えるような交通の難所も解消されますが、一方でトンネル特有の事故の危険がつきまといます。
 道路の場合では1979年には東名高速道路の日本坂トンネルで大きな火災事故があり、2016年には山陽自動車道の八本松(はちほんまつ)トンネルの火災事故で死傷者が出ました。トンネル内で車の事故が起きると、燃料だけでなく積荷が燃える可能性もあります。ヨーロッパのモンブラントンネルでは過去に食料運搬トラックから出火し、その積荷に延焼して火災が拡大するなど、大事故につながりました。

安全に避難するために

 事故の際に安全に避難するために、トンネルにはさまざまな避難設備が造られています。特に避難通路は、本線トンネルとは別に造られた避難坑や、上り線と下り線のトンネルが並走する場合に反対側のトンネルに退避する避難連絡坑があります。東京湾の海底を通るアクアラインでは、円形に掘ったトンネルの下半分を避難通路として使用することになっています。早い避難が必要であると同時に、煙が上部に溜まる性質を踏まえ、さらに気圧も調整することで、トンネル内でも安全に避難ができるようにしてあるのです。

安全にどれだけ費用をかけるか

 避難設備は重装備にすればするほど安全性は高まりますが、一方で工事費はかさみます。発生する確率が必ずしも高いとは言えないものの、ひとたび起きた場合には大事故となることに、どれだけの設備を造るかは非常に難しい問題です。諸外国には高度な避難設備を設けている場合もありますが、国全体のトンネルの数とのバランスや事故の発生率を踏まえて決める必要があります。一方、開発途上国では、限られた予算内でできるだけ多くのトンネルを通したいという要望もあります。
 人命を優先する考えのもとで、社会が成熟するにつれてどのように安全を確保すべきかを考えていくことの重要性が増しているのが世界の現状です。

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この学問が向いているかも トンネル工学

東京都立大学(現・首都大学東京)※2020年4月校名変更
都市環境学部 都市基盤環境学科 教授
砂金 伸治 先生

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メッセージ

 社会の変化が激しさを増す中で、知識や情報は容易に入手できるようになりました。しかし、物事の本質を理解して自らの知見にしていくためには、時間も労力も要すると考えています。
 首都大学東京は教員と学生の距離が近く、身近に現場などの数多くの題材がある環境です。ぜひ、起きている現象を自分の目で見つめ、頭で考え、手を動かし、それによって得られたものを社会に還元することをめざしていく人になってください。そのために、学究的な取り組みを通じて応援していきます。本学で学んでみたいというあなたを待っています。

先生の学問へのきっかけ

 私は宮城県出身で、小学生の頃に1978年の宮城県沖地震を体験しました。この時、建築物が壊れるなどの被害を目の当たりにしたことが、社会インフラを考えるきっかけになりました。土木工学を専攻した大学では橋梁への地震の影響について研究し、卒業後に進んだ国立研究開発法人土木研究所ではトンネルの研究に関わることになりました。トンネルを形作る際は、すべての情報をあらかじめ把握できるとは限りません。トンネル工学は普遍的な原理を追究しながら、社会への実装を考えて、データや知見を有用な形にする使命があるのです。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

官公庁/高速道路会社/鉄道会社/建設会社/建設コンサルタント

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砂金 伸治 先生がいらっしゃる
東京都立大学(現・首都大学東京)※2020年4月校名変更に関心を持ったら

 東京都立大学(現首都大学東京)は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。

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