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講義No.10044

農業工学の細胞評価技術が秘める大きな可能性

鶏のヒナの殺処分を回避するために

 世界では食肉用の鶏の需要が高まっています。食肉用の鶏と卵を産む鶏は別の品種で、食肉用の鶏は生育が早いオスだけを残して、メスはヒナの段階で処分されます。卵を産む鶏の場合はその反対に、オスがヒナの段階で処分されます。産卵用の鶏の場合、年間60億羽のヒナが殺処分されています。
 もし、卵を割らずにオスかメスかを判別できるか、光などを使って産み分けができると、効率的に生産できるとともに、ヒナを殺処分する必要はなくなります。現在、卵に光を通す非破壊の技術で、できる限り早い段階でオス・メスを判定しようという研究が、農業工学の「生物センシング工学」分野で行われています。

水分子で「細胞の質」を測る

 私たちが食べているリンゴやミカンは光センサーで糖度を測り、おいしいものが選別・仕分けされたものです。ここには、生物という複雑なものを数値化する技術が使われています。その延長線上に、細胞の質を測る技術があります。果物だけでなく肉も魚も細胞の集まりなので、従来の技術では難しかった鮮度などの新しい付加価値を生み出すことが可能になると考えられます。
 細胞のほとんどが水分です。そこには水の情報がたくさんあるはずです。実は細胞内の水分子の振る舞いについてはほとんどわかっていません。従来の細胞の研究では、色をつけて顕微鏡でタンパク質やDNAを観察していましたが、水は透明で色をつけることができず、十分な研究手法がなかったからです。最近になって、テラヘルツ領域の光を使って、細胞内の水分子の情報が測定できるようになりました。

医療の分野への応用も

 テラヘルツ分光という技術によって、細胞内の水分子の約25%がタンパク質などの生体分子や小器官に付いていて、ほかの水分子は比較的自由であることが数値でわかるようになってきました。これらの数値から細胞の質を評価できる可能性を秘めています。この技術は農業分野のみならず、創薬や医療における細胞の診断にも使える可能性があると考えられ、研究が進められています。

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この学問が向いているかも 生物センシング工学

京都大学
農学部 地域環境工学科 准教授
小川 雄一 先生

メッセージ

 私の研究室では、世界の食料生産における無駄を取り除くことをめざして、農業工学の先端分野である細胞評価の技術を研究しています。この技術は、肉の質を非破壊で判別することや、細菌の検査などへの応用も考えられます。
 こうした研究には物理・化学・生物学・医学など、多面的な視野と興味が必要なのですが、あなたが高校で物理を学んでいなくてもウェルカムです。足りないところは、興味がある現象を研究するために必要になったときに勉強すればいいのです。

先生の学問へのきっかけ

 高校時代、「鉄腕アトムを作りたい!」という夢がありました。鉄腕アトムのすごさは「ものを認識したり理解したりする能力」だと考え、命令されたことを忠実に行う産業ロボットより、おいしいかおいしくないかなどを見極める農業ロボットの方がおもしろそうだと農業工学分野に進みます。
 キュウリは実も葉っぱも緑色ですが、近赤外線を当てるとはっきり違いが見えます。人間の目で見ているだけでは予想もつかないことが、違う波長の目を持つと見えてくる、その驚きからスタートして世界の食料問題や医学に関わる研究に力を注いでいます。

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小川 雄一 先生がいらっしゃる
京都大学に関心を持ったら

 京都大学は、創立以来築いてきた自由の学風を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献するため、自由と調和を基礎にして基本理念を定めています。研究面では、研究の自由と自主を基礎に、高い倫理性を備えた研究活動により、世界的に卓越した知の創造を行います。教育面では、多様かつ調和のとれた教育体系のもと、対話を根幹として自学自習を促し、教養が豊かで人間性が高く責任を重んじ、地球社会の調和ある共存に寄与する、優れた研究者と高度の専門能力をもつ人材を育成します。

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