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講義No.10037

化学物質が野生動物に与える影響を研究する「環境毒性学」の役割

野生動物を汚染する化学物質

 これまで人間が作ってきた化学物質は1億種類を超え、日々新たな物質が開発されています。なかにはゴミを焼却するときに発生するダイオキシンや、ファストフードの包装紙などに使われている有機フッ素化合物など、生物にとって有害なものも多くあります。それらは、環境中で分解されずに水中に溶けだして魚類の体内に入り、それを食べる鳥類や水棲哺乳類(アザラシ・イルカ・クジラ)などの野生動物に高濃度で蓄積し、さまざまな健康被害を引き起こしています。このように、環境を汚染する化学物質が、どのような種類の生き物に、どういった影響を及ぼすのかという危険の度合い(これをリスクといいます)について研究する学問が「環境毒性学」です。

遺伝子からリスクがわかる

 リスクの大小は、化学物質の量と毒性の強さで決まります。しかし、同じ化学物質でも、動物種によって受ける影響の強さ=「感受性」は異なります。この違いにはそれぞれの動物がもつ遺伝子が大きく関係しているため、野生動物の遺伝子を用いた研究が行われています。
 まず野生動物から「受容体(レセプター)」という遺伝子を採取します。その遺伝子を用いて試験管の中で受容体たんぱく質を作り、環境を汚染している化学物質と反応させます。受容体たんぱく質と化学物質の反応は、動物種によってさまざまで、その反応の強さから「感受性」を調べることができるのです。

野生動物の健康を守るために

 この研究がさらに進めば、野生動物の遺伝子の配列を読み解くことで、特定の化学物質に対してどの動物が敏感に反応するのか特定できるようになります。野生動物を捕殺することなく簡便・迅速に分析できる点がこの研究方法の大きな利点です。この方法を応用すれば、ある化学物質に強く反応する動物種を重点的に調査することで、同じ生態系に属し、より鈍感な反応を示すほかの動物の健康も保証できます。化学物質の脅威から野生動物を守るためにも、環境毒性学の今後の進展に大きな期待が寄せられています。

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この学問が向いているかも 環境毒性学、環境科学

愛媛大学
理学部 理学科 生物学コース 教授
岩田 久人 先生

先生の著書
メッセージ

 環境や野生動物について研究する学問といえば、生態学や獣医学などが代表的ですが、私が取り組む「環境毒性学」もその一つです。野生動物は、人間が作り出した化学物質で被害を受けても、それを訴えることはできません。
 生物や化学の知識を基に生命科学について学び、化学物質の生体への影響やリスクについて研究することで野生動物の被害を代弁することが、環境毒性学の研究者の大きな役割です。ぜひ環境毒性学の調査・研究の重要性と醍醐味について知ってください。野生動物を守るためにできることを、一緒に考えてみませんか。

先生の学問へのきっかけ

 私が環境毒性学に興味を抱いたのは、大学生だった1980年代の半ばです。当時は、ベトナム戦争で米軍が使用した枯葉剤の影響で、奇形の赤ちゃんが生まれたことが世界的に問題になっており、人間が作り出した化学物質が環境や野生動物に与える影響を解明したいと思いました。その後、環境中の化学物質と野生動物の遺伝子の関係を研究するうちに、海洋生態系の上位にいる海鳥やアザラシ・クジラに化学物質の影響が現れやすいことがわかりました。それ以来、さまざまな野生動物を対象に、化学物質のリスクについて研究を続けています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大学教員/国・地方自治体研究所研究員/官公庁行政職/中学・高校教員/民間企業研究員

研究室
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岩田 久人 先生がいらっしゃる
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 愛媛大学は、「学生中心の大学」の実現をめざして、学生の視点に立った改革を進めています。そして、すべての学生が入学から卒業までの過程で、自立した個人として人生を生きていくのに必要な能力を習得することをめざしています。そのため本学では、正課教育のほか、正課外のサークル活動(正課外活動)やボランティア活動、留学、下級生への学習支援(準正課教育)等を通じ、その能力を磨くための多くの機会を設けています。あなたの可能性が広がる学び舎、それが愛媛大学です。

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