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講義No.09965

光の波長でがん細胞や末梢神経を可視化する~医療を変える顕微分光学~

光が持つさまざまな色を利用する

 普段の生活の中で最もよく目にする光は、白い光です。光は波長によって赤・橙(だいだい)・黄・緑・青・藍・紫と色が変わり、すべての色が重なった状態が白い光です。「顕微分光学」という学問は、顕微鏡の中の小さな世界で、光をさまざまな色と波長に分けて、対象を分析する学問です。
 光の種類も多数あり、細かなものを対象とする顕微分光学では「ラマン散乱光分法」という手法が使われます。これは、緑色の光を物質の中の分子に当てると、黄色や赤色の光が発生するという性質を使って、対象の状態を定量的に知る方法です。

神経や組織を可視化

 光の研究は、医療分野への応用も進められています。例えば、がんの手術を行う際、がんがどこにあるのかを適切に知る必要があります。がん細胞は特殊な薬を投与して紫外線に近い色の光を当てると自ら光る性質があり、これを利用して、光を当てたときの色の変わり具合でがんの位置を可視化します。
 また、がん治療では、がんの摘出とともに、がんの周辺にある末梢神経をいかに残すかが術後の回復に大きく影響します。末梢神経は非常に細かく、肉眼では周辺にある血管や膜、コラーゲンなどとの区別が困難です。しかし、特定の波長の光を当てると、色の変わり方から末梢神経の位置がわかるのです。

医療の未来が変わる

 心筋梗塞の手術にも光による可視化が役立ちます。心臓にある心筋という筋肉が生きているかどうかで手術の方法は変わるため、心筋を可視化することで適切な手術や治療が可能になるのです。このような医療分野の基礎研究が進み、細胞や組織によってどのように色が変わるのかが明らかになってきました。
 今後は実際に人体に応用し、患者の治療に結び付くか検証していく段階に入ります。組織や神経を可視化する技術が医療の現場で実用化されれば、これまで解剖学的な知識に頼って行われていた手術を、より適切に行うことができるようになるため、顕微分光学への期待はますます高まっています。

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この学問が向いているかも 顕微分光学

徳島大学
理工学部 理工学科 機械科学コース 准教授
南川 丈夫 先生

メッセージ

 高校の授業の中には、苦手な科目もあるかもしれません。しかし、たとえ苦手でも、そしてその科目が受験に関係なくても、切り捨ててしまうことはよくありません。なぜなら、大学に進むと、自分が選んだ分野の勉強だけで済むことはほとんどなく、さまざまな分野の学問的知識が必要になるからです。
 そのときに、苦手であっても少しの知識や関心を持っていれば、リカバーすることができます。「苦手である」「興味がない」といったレッテルを貼らず、幅広い学びを身につけましょう。

先生の学問へのきっかけ

 中学時代から理系分野に興味があり、卒業後は高専に進学しました。学業のかたわらロボコンに熱中し、大学はより理学に近い基礎工学部に入学します。そこで生体と機械の親和性を知り、それを見るための光に興味を抱き、大学院に進学します。その後、医学部で医療的知見も習得し、今は大学で顕微分光学をベースに光の多様な可能性を追求しています。学内に発足したポストLED研究所にも所属し、多分野の研究者が集まる場所で、学問分野の違いで生じるバリアーをなくし、研究者同士が適切に連携することで新発見に挑みたいと思っています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

光学メーカー研究開発/自動車メーカー設計製造/電機メーカー設計製造/教育機関研究/官公庁技術

研究室
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南川 丈夫 先生がいらっしゃる
徳島大学に関心を持ったら

 徳島大学は有為な人材の育成と学術研究を推進することにより、人類の福祉と文化の向上に資するため、自主・自律の精神に基づき、真理の探究と知の創造に努め、卓越した学術及び文化を継承し、世界に開かれた大学として豊かで健全な未来社会の実現に貢献することを理念としています。豊かな緑、澄み切った水、爽やかな風、温暖な気候に恵まれた徳島の地にあって、「知を創り、地域に生き、世界に羽ばたく徳島大学」として、発展を目指しています。

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