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講義No.09951

「パルスパワー」が変える食品や製薬の未来

瞬間的な大電力を活用する

 ある物体に電力を加えるとき、直流的な加え方とパルス的な加え方があります。直流的な電力は、電力が持続する点が特徴ですが、大半がジュール熱という熱エネルギーへと変わってしまいます。一方のパルスパワー(パルス大電力)は、1000万分の1秒という非常に短い時間の中にエネルギーが圧縮されるため、電気が熱よりもむしろ「力」として作用する点が特徴です。
 「バイオエレクトリクス」という工学と生物、医、薬、食品にまたがる複合分野では、このパルスパワーを使って、DNAやタンパク質などの生体高分子や、細胞内器官に直接的にストレス(力)を与え、医療や製薬、食品の分野に役立てる研究が進んでいます。

菌だけを殺す技術

 研究の一つに、食品の殺菌があります。生物を構成する細胞は、細胞膜と呼ばれる脂質の膜で覆われていて、この膜が破壊されると細胞は死んでしまいます。パルスパワーの研究が進んだ現在、細菌の細胞膜だけを狙って電気的な力を加えることができるようになりました。食べ物を腐らせてしまう細菌も細胞で構成されていますから、パルスパワーを使って細胞膜を破壊すれば、細菌を殺すことができるのです。ジュール熱が発生しにくいため、一般的な加熱殺菌と比べて食べ物の風味や質感が損なわれにくく、安全で品質の高い食べ物を提供することができます。

高まる産業界からの注目

 もう一つの研究は、細胞内に含まれる成分の抽出です。例えば薬草は煎(せん)じて飲まれますが、煎じるとは、熱で薬草の細胞膜を破壊して中身の成分を抽出するということを意味します。しかし、熱は膜だけでなく中身の成分も壊してしまいます。そこで、パルスパワーを用いて細胞膜だけを破壊すれば、中身の成分は壊さずに抽出できます。
 このように、パルスパワーは食品や製薬といった分野を飛躍的に向上させる可能性を持っているのです。産業界からの注目も高く、現在は実用化に向けた試験が進められています。

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この学問が向いているかも バイオエレクトリクス学

熊本大学
工学部 情報電気工学科 教授
勝木 淳 先生

メッセージ

 私は、パルスパワーという大きな電力を生体に利用する、バイオエレクトリクスの研究をしています。電気工学や生物学、医学、食品工学などいろいろな分野にまたがる新しい研究分野で、実験するたびに新しい発見が得られます。
 大学に進むにあたって、自分の専門分野を絞り、その道を追究していくことはとても大切です。しかし、狭い分野の研究に限定してしまうのではなく、ほかの分野にも目を向けて、いろいろな技術を俯瞰(ふかん)できる力も培ってください。

先生の学問へのきっかけ

 私は、パルスパワーという強力な電気を生物に利用する研究を行っています。私が研究者になったのには、大学の工学部の恩師の存在があります。柔軟な発想を持っていた恩師は、学生たちに新しいアイデアにどんどんチャレンジするよう指導しており、私も電気と生物を結びつけ、現在につながる研究アイデアを生み出しました。そして、工学の観点で見ると一筋縄ではいかない生物の世界に魅力を感じ、パルスパワーによる研究に取り組んできました。現在は大学での活動のほかに、企業との共同研究を進めるなど、充実した研究生活を送っています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

電機メーカー/食品メーカー/医療機器メーカー/自動車・関連部品メーカー/大学教員など

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勝木 淳 先生がいらっしゃる
熊本大学に関心を持ったら

 熊本大学は、「総合大学として、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的、及び応用的能力を備えた人材を育成することにより、地域と国際社会に貢献する」という理念に基づき、地域のリーダーとしての役目を果たしています。かつ、世界に向け様々な情報を発信しながら、世界の学術研究拠点、グローバルなアカデミックハブとして、その存在感を高める努力をし、教育においては、累計30件にも及ぶ「特色ある教育プログラム」が優れた取り組みとして文部科学省から認定され、その教育力の高さと質の高い教育内容は定評のあるところです。

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