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講義No.09903

ミクロな視点からマクロな問題を明らかにする文化人類学

客家の文化が創られるとき

 中国には、客家(はっか)と呼ばれる人たちがいます。かつて中華文明が栄えた中原(ちゅうげん)にいた人々が、戦乱を逃れて南の福建省や広東省に住み着いたというのが通説です。しかし近年では、もともと福建省や広東省の土着の人々とも言われています。彼らは土楼(どろう)と呼ばれる巨大な集合住宅で一躍有名になりました。世界文化遺産にも登録された土楼という住まいに、彼らは一族を単位として一緒に生活してきました。
 これまでメディアなどでは土楼の中央に、祖先を祭る祖堂があるといわれてきましたが、実際に祖堂があるのは土楼の外で、そこで祭祀(さいし)が行われます。つまり、これまでユネスコを含む学術機関、メディア報道などでは「誤った」情報が発信され続けてきました。なぜでしょう? それは「描く側」の型に事例を当てはめてしまったからです。しかしその「誤った」情報は、場合によっては現地社会に受け入れられ客家の文化となっていきます。

文化人類学者の「仕事」

 文化人類学者はこれらの変化を見逃しません。なぜなら、文化人類学者は2~3年間の長期にわたって、現地に入って一緒に生活するからです。これをフィールドワークといい、そこで得られた情報から人々の生活や文化を民族誌として記述します。民族誌で重要なのは、さまざまな事象を「部分と全体」から考えることです。なぜ彼らは一族を単位として生活しているのに、土楼の中央に祖先を祀らなかったのか、それは彼らの土楼内の細かな利用状況から読み取ることができます。

日本人とは違う客家の親族と住まい方

 これまでの研究により、客家(を含む漢族)は日本人と違う親族組織をもつことがわかっています。例えば日本では、兄弟が結婚後も一緒に住み続けるというのはちょっと考えにくいですが、土楼という建物は生涯兄弟が(結婚後も)一緒に生活するように設計された建物です。土楼というミクロな事例を手がかりに、親族、家屋、表象(ひょうしょう)、社会、文化といったマクロな問題を考えることができるのです。

スローサイエンスとしての文化人類学

夢ナビライブ2019 大阪会場

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フィールドワークの重要性

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中国でのフィールドワークの実例

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「メディア・政治」と「社会・文化」の関係

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講義を視聴する(30分)

この学問が向いているかも 文化人類学

山口大学
人文学部  准教授
小林 宏至 先生

先生の著書
メッセージ

 わたしの専門は文化人類学です。文化人類学は大学から学び始める学問分野です。基本的に長期間にわたってフィールドワークを行い、民族誌を書くといった作業を通して、対象となる人、もの、事象を明らかにしていくものです。
 例えば、ある文化(わたしの調査地である漢族社会がそうですが)においては、父方の祖父と母方の祖父の呼び方が違います。そのような、身近なところにあふれる文化を、フィールドワークと民族誌を読む、書くということを通じて学ぶのが文化人類学です。関心があれば、文化人類学の門をたたいてみてください。

先生の学問へのきっかけ

 文化人類学という研究分野は、「圧倒的な他者」と出会うことで育まれてきた学問分野です。私にとってのそれは中国人、とりわけ客家と呼ばれる人々です。私が小さい時は、まだ中国は「完全」に開かれた社会ではなく、謎に満ちた「不思議な国」でした。大学生になり、やっと実際に中国を見ることができるようになりましたが、目にした中国の文化、親族関係、儀礼、信仰、家屋はやはり不思議だらけで、「圧倒的な他者」であることを再確認しました。現地で客家の人々と一緒に生活するなどして研究を続けています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

医療機器営業職/裁判所事務員/衣料メーカー総合職/銀行員総合職/鉄道運輸業総合職/制作会社一般職/釣具メーカー総合職/保険会社営業職 など

研究室
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小林 宏至 先生がいらっしゃる
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