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講義No.09683

アルツハイマー病の治療に革命を起こせるか

脳内のゴミを掃除する謎の細胞

 脳にはミクログリアという細胞が存在します。謎の多い細胞ですが、脳が持つ唯一の免疫細胞であることが知られています。脳の病気のアルツハイマー病の原因が、加齢とともに溜まるアミロイドβというゴミの蓄積だと言われていますが、ミクログリアにはこのゴミを掃除する機能があるとわかりました。
 つまりミクログリアが元気であればアルツハイマー病にかかる可能性が低くなると考えられます。実際にラットの赤ちゃんからミクログリアを培養し、アミロイドβを脳に注射したラットに移植すると、脳からアミロイドβがきれいになくなりました。

生涯に一度しか作られない神秘の存在

 しかし、これを人間に応用するのは簡単ではありません。例えば白血病を治療するには、骨髄にある血液を作り出す造血幹細胞をすべて除去し、新しい造血幹細胞を移植します。脳にある古いミクログリアを薬ですべて除去することは技術的に可能であることがマウスでわかっていますから、アルツハイマー病の治療でも同じことをすればよいわけです。ところが実際には、生命の犠牲なしにミクログリアを入手できないのです。というのも、赤ちゃんが母親のおなかの中で育つ胎生期に一度だけ生み出される細胞である「原始マクロファージ」が、発生途中の脳にすみ着いてミクログリアとなるからです。しかも脳ができあがった後では、脳へのバリアとなる血液脳関門によって生後のマクロファージは脳に入り込めません。つまりミクログリアが生まれるチャンスは生涯に一度しかないのです。

iPS細胞で乗り越える!

 ここで重要な役割を果たすのがiPS細胞です。iPS細胞を使えば、原始マクロファージに近いものを作り出せると期待されています。しかし現状では、直接細胞を脳に移植できても、血液脳関門を破壊せずに血中からミクログリアを脳に入れることができません。この壁を乗り越えることさえできれば、アルツハイマー病をはじめとするさまざまな脳の疾患が治療でき、私たちの未来は大きく変わるはずです。

参考資料
1:アルツハイマー病の病態解明と治療戦略の開発

この学問が向いているかも 薬学、脳科学、神経生物学

京都薬科大学
薬学部 薬学科 統合薬科学系 教授
高田 和幸 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 大学では自由が与えられます。それは大学生活でのあらゆる体験が、あなた自身の将来につながる大切な財産となるということです。あなたの脳は今、生理学的に最も能力を発揮しやすい状態です。大学で学ぶための基礎知識、基礎体力をしっかりと身につけてください。その底力が、大学での学問の学びの深さにつながります。
 最近は何かと人工知能(AI)が注目されていますが、人間の脳にはAIに勝るものがあると信じます。それは「失敗し修正できる」ことです。革新はむしろ失敗から生まれます。失敗しながら一緒に学んでいきましょう!

先生の学問へのきっかけ

 私は実家が薬局でした。病気の相談を受けたり、小学生の自由研究の相手をしたりする父の姿を見てきて「薬剤師は町の科学者なんだ」と感じたことが、現在の道に入るきっかけとなりました。中高生の頃は数学が得意で進学も考えましたが、ある友人が、私には単に問題を解く手段だった方程式から、いろいろな思考を発展させていることに驚き、とても数学では勝てないと思い諦めました。そして神秘的で有機的な生物学に魅せられていきます。最も神秘的だったのは脳でした。考え、創造し、感情を生む脳のメカニズムを知りたいと考えたのです。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

製薬会社研究・開発・販売・学術社員/病院薬剤師/薬局薬剤師/行政公務員保健所職員/大学教員/研究所研究員

研究室
大学アイコン
高田 和幸 先生がいらっしゃる
京都薬科大学に関心を持ったら

 京都薬科大学では、「愛学躬行」を建学の精神とし、2014年に創立130周年を迎えました。薬の専門家として質の高い薬剤師を養成し、高度化・多様化が進み安全・安心の医療が求められる中、真に社会に貢献しうる人材を目指し、問題発見、問題解決型の教育に力を注ぎ、Science(科学)、Art(技術)、Humanity(人間性)のバランスのとれた人材育成します。そして、学術研究の推進とともに、高度の専門的能力や研究能力を有する薬剤師であるファーマシスト・サイエンティストを養成します。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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