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講義No.09582

教育と憲法の関係から日本の公教育のあり方を考える

教育から排除される子ども

 真面目で理解が早く、試験の成績が良くて、先生に余計な手間をかけさせない、こんな生徒だけがそろったクラスであれば、学校の授業はこの上なくスムーズでしょう。しかし現実には、家庭や健康の問題などさまざまな理由から授業に追いつけない生徒もいれば、逆に授業を物足りなく感じる生徒も存在します。
 日本国憲法第26条では、誰もが等しく教育を受ける権利が保障されています。実際には、「一定」を前提とした授業に追いつけない生徒は、理想的な授業の進行と比較して、それを妨げる存在とみなされてしまうこともあるでしょう。日本の教育制度のもとでは、子どもの人権が実質的に守られているとはいえないのです。

教育と憲法の狭間で

 日本も加盟しているユネスコ(国連教育科学文化機関)では、すべての子どもが対等で平等であるとしています。また「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」や日本国憲法では、子どもを権利をもつ主体と位置づけ、おとなと同様ひとりの人間として人権を認めるとしています。しかし日本の教員養成課程では、子どもの人権や教育を受ける権利についてあまり教えられてきませんでした。本来なら教育学と憲法学の両方から議論されるべき問題ですが、その狭間にあるため、これまで十分に考えられてこなかったのです。

教育とSDGsの関係

 子どもの教育はまた、貧困問題と密接な関係があります。日本の相対的貧困率は6~7人に1人と先進国の中でも高く、貧富の差に基づく階層格差が進んでいます。貧困家庭や一人親家庭が増加すると、子どもの学力に大きく影響します。国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の17のゴールには「貧困をなくす」「質の高い教育をみんなに」「人や国の不平等をなくす」ことが記されています。日本政府はSDGsを守ることを表明していますが、そのためには教育現場に子どもの権利を守る意識をもっと取り入れて、すべての子どもが等しく教育を受けられる制度を整えることが求められているのです。


この学問が向いているかも 教育学、憲法学

大阪公立大学※2022年4月大阪市立大学と大阪府立大学の統合による開学
現代システム科学域 教育福祉学類 教授
伊井 直比呂 先生

メッセージ

 この世界には、自分が見えていないものを見ている人がたくさんいるということをぜひ知っておいてください。性別や国籍、年齢や身体的特徴の違いなど、いろいろな背景を持った人があなたの近くにも、世界中の国々にもたくさんいます。
 そうした人たちを認めて、彼らが見ているものを自分も知ろうと努力することこそが世界に多様性をもたらしますし、自分を客観視し、何が本当なのかを知ることにもつながってくるのです。

先生の学問へのきっかけ

 私は、子どもの権利やユネスコ国際教育、そして憲法と教育の関係などを専門に研究をしています。高校時代から生徒会長を務め、多くの教師との関わりの中から教育への興味を深めてきました。法学の分野でも人権や平和、平等について学び、現在は教育における人権性や、競争でなく共創する学びのあり方を、ユネスコスクール(ユネスコの精神で教育活動する学校)の発展と共に進めています。またESD(持続可能な開発のための教育)やSDGs(持続可能な開発目標)の観点から、誰一人取り残されない、という学校教育も提唱しています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

中学・高校教員/国家公務員・行政職/地方公務員・行政職/IT企業/民間教育関連企業

大学アイコン
伊井 直比呂 先生がいらっしゃる
大阪公立大学※2022年4月大阪市立大学と大阪府立大学の統合による開学に関心を持ったら

 2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学を母体に「大阪公立大学」が誕生します。1学域・11学部の幅広い学問領域と大学院を含め約1万6千人の学生を擁する、全国最大規模の公立総合大学となる予定です。規模を拡大しつつ、これまで同様、学生と教職員の自由闊達な環境で教育を行います。基幹教育と高度な専門教育を有機的に結び付けた複眼的視点を持ってあらゆる問題を俯瞰的かつ直観的に見通す力を培うことで、グローバルに活躍できる高度人材を育成します。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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