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講義No.09552

動物が秘めた「免疫」の可能性を探る

体を守ってくれる「抗体」は、どこからくる?

 私たちの体には、病原菌やウイルスなどの異物(抗原)が体内に入ってきたとき、それと闘って追い出してくれる「免疫」というシステムがあります。この抗原と闘ってくれるのが「抗体」で、免疫が未熟で生まれてくる赤ちゃんにこの抗体を提供しているのが母乳です。人間の場合、母親のおなかの中で胎盤からも胎児に抗体が送られますが、牛や豚などの家畜は、胎盤が厚いために抗体を送ることができず、母乳を通してしか赤ちゃんに抗体を提供できません。ですから、生後に母乳を飲めなかった赤ちゃんは、ほぼ確実に死んでしまいます。つまり哺乳動物にとって、乳房は子どもに栄養を与えるだけでなく、抗体をも提供する重要な臓器なのです。

腸にある「免疫細胞」が母乳の中の抗体を作る

 しかしそもそも、抗体を作ることができるのは免疫細胞だけであり、乳房の中にある母乳を作る細胞は抗体を作り出すことはできません。では、なぜ母乳に抗体が含まれているのでしょうか? 実は、抗体を作る免疫細胞が、授乳中に限り、母乳が作られる乳房に集まってくるのです。免疫細胞は体のあちこちに存在していますが、特に腸にはたくさんの免疫細胞が集まっています。つまり、異物がたくさんいる母親の腸の中で教育を受けた免疫細胞が、授乳中に乳房に集まり、そこで抗体を作ります。その抗体入りの母乳を飲んだ赤ちゃんの腸で、抗体が働いてくれるのです。

畜産動物の研究に秘められた可能性とは?

 授乳中の母親の腸の状態をきちんと管理できれば、良い抗体が多量に作られ、母乳を飲んだ赤ちゃんはより元気になるということが可能になるかもしれません。畜産農家にとって、生まれてきた牛や豚の赤ちゃんが一頭でも死んでしまうと、経済的に大きな損失となります。この研究が進めば、より元気な家畜の赤ちゃんが育つことになり、農家にとっては、利益を上げることにつながります。さらに、同じ哺乳動物である人間にもさまざまに応用できる可能性を秘めているのです。

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この学問が向いているかも 農学、畜産学、免疫学

東北大学
農学部 生物生産科学科 応用動物科学コース 准教授
野地 智法 先生

メッセージ

 私は動物の免疫についての研究をしています。動物が、いかにして微生物やウイルス感染から身を守るか、そのための免疫の仕組みを解明しています。
 あなたも、自分の個性をポジティブに伸ばしてください。また自分の夢がかなえられる環境を、自分の力でつくっていってください。東北大学農学部では、さまざまな研究での成功や失敗など数多くの経験を通して、人間として大きく成長できる環境が整っています。

先生の学問へのきっかけ

 高校時代はボート部の練習に明け暮れていました。もともと動物が好きでしたが、農学部への進学を決めたのは、高校時代に出会った生物の教師がとても魅力的な人だったからです。入学後、大学の牧場で見たある牛のお乳が、なんて腫れているのだろうと思ったら、実はその牛は乳房炎という病気だったのです。その病気の予防や治療に関する研究をしたいと思い、基礎となる免疫学を徹底的に学ぶことが必要と考えて、まずは粘膜免疫という分野の研究に没頭しました。現在は、母乳の中に含まれる哺乳動物特有の免疫物質について研究しています。

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野地 智法 先生がいらっしゃる
東北大学に関心を持ったら

 建学以来の伝統である「研究第一」と「門戸開放」の理念を掲げ、世界最高水準の研究・教育を創造しています。また、研究の成果を社会が直面する諸問題の解決に役立て、指導的人材を育成することによって、平和で公正な人類社会の実現に貢献して行きます。社会から知の拠点として人類社会への貢献を委託されている東北大学の教職員、学生、同窓生が一丸となって、「Challenge」、「Creation」、「Innovation」を合言葉として、価値ある研究・教育を創造して、世界の人々の期待に応えていきたいと考えます。

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