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講義No.09444

芸術作品に映し出される「精神=政治」が、未来を開拓するヒントになる

芸術作品から時代の「精神=政治」を読む

 小説や絵画には、それがつくられた時代の様子が描かれています。その時代の人々の服装や食事を私たちは思い浮かべます。そこからもう一歩進んで考えてみると、当時の「精神」を窺い知ることができます。
 「精神」とは、人間の頭の中のことを指すのではなく、時代ごと、社会ごとに存在する息づかいです。それは「政治」(politics)とも言い換えられます。ここでいう「政治」とは、人々の間の力関係のことで、ときに差別や人権侵害を生み出すものです。意識的かどうかは別にして、芸術家はその時代にしかない喜びと苦しみを味わい、時代の「精神=政治」を映す作品を残すのです。

モダニズム芸術に映る「精神=政治」

 1920年代、パリには世界中から芸術家が集まっていました。後にノーベル文学賞を受賞した米作家、アーネスト・ヘミングウェイもその一人です。ヘミングウェイは、伝統的な遠近法の技法よりも自分の身体感覚に忠実なポール・セザンヌの絵に衝撃を受け、「セザンヌ絵画のように書く」ことを小説で実現しました。パリに住む直前に第一次世界大戦で凄惨な戦場を経験したヘミングウェイは、親世代に教えられた「正しさ」を疑い、新しい価値観を求めた戦後世代の一人だったのです。
 世代間の政治に加え、ヘミングウェイはパリでLGBTの人々との交流も経験し、性的マイノリティを主題に小説を書きました。異性愛が正しいという性の政治が変わり始めた当時、ヘミングウェイの小説はその精神=政治を映し出したのです。

コンテンツに反映する現代社会を見つめる

 人々の興味は、小説や絵画といった伝統的な芸術作品から、テレビ、インターネット、SNSが生み出す利便性・即席性に長けたコンテンツへと移りつつあります。しかし現代のそうしたコンテンツにも、時代とそこに息づく精神=政治が反映しています。ある時代を芸術作品から読み解くことは、私たちが目の前のコンテンツに反映する社会問題を考え、いかに問題を解決すべきかのヒントになる可能性を秘めています。

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この学問が向いているかも 文学、芸術学、ジェンダー学

関西学院大学
法学部  教授
小笠原 亜衣 先生

先生の著書
メッセージ

 ただの絵だと思って見ていたら、そこに不思議なものが描かれていることに気づき、描かれた当時の社会情勢や作者について調べると、それまで見えていなかった物事が浮かび上がってくる……あなたはこんな体験をしたことはありますか? 学問の面白さは、そこにあります。
 もちろん絵でなくても構わないのですが、「知る」を積み重ねていくと、単なる知識だけでなく、人としての成長の基となる「想像力」を生み出します。不寛容と言われる社会に負けない知と想像力を鍛え、人の痛みがわかる真に優しい大人になりましょう。

先生の学問へのきっかけ

 英語を勉強するつもりで入った大学で、ヘミングウェイの小説『武器よさらば』と出合います。そしてある一節に込められた戦争の狂気に気づき、どんな心理で書かれたのか、どんな時代背景があったのか、ということに興味を持ちました。それまで絵画には多く触れてきましたが、本はほとんど読んでいませんでした。一つの授業、一冊の小説が、文学研究の道へと導いたのです。そして、結果的にそれは、文学研究の道であると同時に、政治と社会を研究する道でもありました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

弁護士/公務員/研究者/銀行員/企業法務部/エンターテインメント

研究室
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小笠原 亜衣 先生がいらっしゃる
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 スクールモットーである"Mastery for Service"は、「奉仕のための練達」と訳され、隣人、社会、世界に仕えるため、自ら鍛えるという関西学院の人間として目指すべき姿を示しています。
 1889年にアメリカ人宣教師W.R.ランバスによって創立された関西学院は、このスクールモットーを体現する、創造的かつ有能な世界市民を育むことを使命とし、現在、関西学院の3つのキャンパスでは、約2万人の学生が個性あふれる11学部で学んでいます。

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