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講義No.09440

「オレンジ色の猫」から言語の多様性と普遍性が見えてくる!?

orange catはどんな猫?

 英語の小説の訳書に「オレンジ色の猫」という表現がありました。疑問に思った言語学者の鈴木孝夫先生が調べてみたところ、スペクトルの中でorangeと「オレンジ色」が指せる範囲は、中心では重なっているものの、全体として合致しているわけではないことがわかりました。orange catは、<オレンジ色の猫>ではなく、<明るい茶色の猫>だったのです。

迷惑を表す受動態は日本語の個性

 文法における受動態も同様で、「太郎は花子に叱られた」のように、どんな言語の受動態でも表現できる範囲もあれば、「太郎は花子に泣かれた」のように、一部の言語でしか受動態で表現できない範囲もあります。
 受動態とは本来、主語が動詞の表す行為によって影響を受ける、という意味を表します。「太郎は花子に叱られた」の場合、対応する能動態の文「花子は太郎を叱った」も「太郎」が影響を受けたという意味を含んでいます。しかし、「太郎は花子に泣かれた」という文に対応する能動態の文「花子は泣いた」には太郎はそもそも登場しません。「太郎は花子に泣かれた」の意味に含まれる太郎が受けた影響とは、花子が泣いているところに居合わせた太郎が経験した迷惑感だと考えられます。このような迷惑感を受動態で表すことができるのは日本語の個性だといえます。

文法は自由な言語表現を可能にする

 言語の使用を可能にする知識は、語彙(ごい)と文法に分けることができます。語彙の単位を言語学では「語彙項目」といい、「それぞれの言語の丸ごと覚えなければならない表現の単位」を指します。しかし、単独の語彙項目(「犬」、「猫」など)だけでは伝えたいことを自由に表現することができないため、複数の語彙項目を組み合わせて新しい文(例えば、「犬が猫を追いかけていた」)を作り、理解することを可能にする仕組みとしての文法が必要になります。「認知言語学」ではその文法の知識の単位(名詞、動詞、主語、二重目的語構文など)自体にもそれぞれ意味があると考えています。

文法に意味はあるのか?: 認知文法の視点

夢ナビライブ2019 名古屋会場

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この学問が向いているかも 認知言語学

東京大学
文学部 人文学科 教授
西村 義樹 先生

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メッセージ

 私の知る英語が得意な日本人は、総じて日本語の表現力が高いです。難しい言い方ができる、という意味ではなく、自分の言いたいことを誤解なく相手に伝えることができる、という意味での表現力です。まずは母語の表現力を高めて、相手が言ったことも正確に理解できるようになる、ということが言語学習の基本だと思います。
 自分の好きな作家の本を読んで優れた表現に触れたり、短文でもいいので日本語で文章を書いて表現したりすると、あなたの表現力を向上させることができるでしょう。

先生の学問へのきっかけ

 中学生の頃、NHKラジオの「続基礎英語」講座で安田一郎先生の「現在完了」の解説を聞き、日本語と英語の文法の違いに関心を持ちました。大学でも英語を勉強していましたが、当初は研究の方向性がわからずにいました。しかし大学2年生の時に読んだ池上嘉彦先生の『意味の世界 現代言語学から視る』という本をきっかけに意味論の研究をしたいと思うようになり、大学院に進学しました。その後、認知言語学という新しい分野が誕生し、文法自体が意味を持っているという考え方に共感したため、現在に至るまで研究を続けています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大学教員/研究所研究員

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西村 義樹 先生がいらっしゃる
東京大学に関心を持ったら

 10月5日(土)に夢メッセみやぎで開催される大学研究&学問発見のための国公私立大 合同進学ガイダンス「夢ナビライブ2019仙台会場」で、西村 義樹先生が【文法に意味はあるのか?: 認知文法の視点】というタイトルの講義ライブを15:10から実施! 全部で140名の大学教授が講義ライブを実施するほか、本学を含む118大学が個別ガイダンスを実施します。詳しくは
 https://yumenavi.info/live/sendai/をご覧ください。

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