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講義No.09439

日常的に用いる言語表現に広く見られる「換喩」とは?

「村上春樹」は作品を指すことができる

 「村上春樹を読んだ」という文があるとします。これはもちろん、「村上春樹という人物を読んだ」ではなく、「村上春樹の作品を読んだ」という意味です。このように、ある表現を使って、その表現が通常指すものと密接な関係にある別のものを指すという現象を換喩(かんゆ)といい、どんな言語にも存在すると考えられています。
 換喩は動詞に対しても起こります。例えば、「しみる」という動詞を使って「冷たい水が歯にしみる」とも「歯がしみる」とも言えます。「冷たい水が歯にしみる」は、冷たい水が少しずつ歯に入り込んで作用する、という意味を表していますが、「歯がしみる」は、その結果歯に痛みが生じることに意味の焦点が移行しています。こうした意味の違いを反映して、前者では「冷たい水」が、後者では「歯」が、それぞれ主語になっているのです。

換喩は言葉の意味を変化させる?

 言葉の意味変化にも換喩が見られる例があります。英語のbeadsは現在では<数珠玉>を意味しますが、もともとは<お祈り>という意味でした。昔は教会で同じお祈りを何度も唱えるという習慣があり、手に持った数珠玉を数えることによってお祈りの回数を把握していました。<お祈りを数える>のと<数珠玉を数える>のとは同じ行為であったため、beadsが<数珠玉>を表すようになりました。これは意味変化に見られる換喩といえます。

意味の焦点の移行で文法が生まれる

 認知言語学の重要なテーマの1つに「文法化」があります。本来の意味が希薄化して文法の一部として定着していくことを文法化といい、どの言語にも見られる現象です。
 例えば英語にbe going to~という表現があります。ある時点以降に生じる事態を表す構文ですが、もともとは<~するために移動している>という意味でした。しかし、意味の焦点が移行して<移動>の意味が薄れていって、<ある時点以降に事態が生じる>という意味だけが残ったのです。

文法に意味はあるのか?: 認知文法の視点

夢ナビライブ2019 名古屋会場

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この学問が向いているかも 認知言語学

東京大学
文学部 人文学科 教授
西村 義樹 先生

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メッセージ

 私の知る英語が得意な日本人は、総じて日本語の表現力が高いです。難しい言い方ができる、という意味ではなく、自分の言いたいことを誤解なく相手に伝えることができる、という意味での表現力です。まずは母語の表現力を高めて、相手が言ったことも正確に理解できるようになる、ということが言語学習の基本だと思います。
 自分の好きな作家の本を読んで優れた表現に触れたり、短文でもいいので日本語で文章を書いて表現したりすると、あなたの表現力を向上させることができるでしょう。

先生の学問へのきっかけ

 中学生の頃、NHKラジオの「続基礎英語」講座で安田一郎先生の「現在完了」の解説を聞き、日本語と英語の文法の違いに関心を持ちました。大学でも英語を勉強していましたが、当初は研究の方向性がわからずにいました。しかし大学2年生の時に読んだ池上嘉彦先生の『意味の世界 現代言語学から視る』という本をきっかけに意味論の研究をしたいと思うようになり、大学院に進学しました。その後、認知言語学という新しい分野が誕生し、文法自体が意味を持っているという考え方に共感したため、現在に至るまで研究を続けています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大学教員/研究所研究員

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西村 義樹 先生がいらっしゃる
東京大学に関心を持ったら

 10月5日(土)に夢メッセみやぎで開催される大学研究&学問発見のための国公私立大 合同進学ガイダンス「夢ナビライブ2019仙台会場」で、西村 義樹先生が【文法に意味はあるのか?: 認知文法の視点】というタイトルの講義ライブを15:10から実施! 全部で140名の大学教授が講義ライブを実施するほか、本学を含む118大学が個別ガイダンスを実施します。詳しくは
 https://yumenavi.info/live/sendai/をご覧ください。

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