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講義No.09352

遺伝子は環境の変化に影響を受けるのか

マウスの養育行動について実験する

 行動を科学的に検証する上で、遺伝子が変異したマウスを使った実験が行われます。
 マウスを、遺伝子に突然変異がないAグループ、遺伝子に突然変異が生じたBグループに分け、それぞれの出産後の子育ての様子を観察することにより、遺伝子と「養育行動」の関係性が見えてきます。Aグループのマウスは、産まれた子どもに対して、毛づくろいをしたり立派な巣を作ったりしますが、遺伝子が変異しているBグループのマウスは、子どもの面倒を見なかったり(育児放棄)、中には子どもに対して攻撃行動をしてしまうものも現れます。この結果から、突然変異が入っている遺伝子が養育行動に関わっていることがわかります。

マウスの行動が環境によって変化

 さらに、この変異した遺伝子を持つマウス(Bグループ)から生まれた仔を、条件を変えて育てます。具体的には、そのままの環境で育てるグループと、好環境に移動するグループに分け、成長後の行動の変化を観察します。すると、好環境に置かれた仔は、子育てに関わる遺伝子に突然変異が入っていても、自身が子育てする立場になった時、養育行動が改善するというデータも出ています。

環境次第で変わることができる

 動物の知能レベルや生存する環境は複雑で多様であるため、マウスの実験でわかったことがすべて、ほかの動物へ当てはめることはできません。しかし、遺伝子に突然変異を持っているマウスでも、十分な養育を受けると行動が改善することは実証されています。
 なぜこういうことが起きるかというと、遺伝子の構造は変わらないものの、生まれた後に受ける刺激により、遺伝子から作られるタンパク質の量が変化するからです。これを「エピジェネティクス」といい、研究が進められているところです。動物の行動は、遺伝子のみで決まるものではなく、環境の影響も大いに受けているということです。


この学問が向いているかも 動物行動学、行動神経学

東海大学
農学部 動物科学科 講師
今井 早希 先生

メッセージ

 学生の頃、動物が好きで農学部に進みましたが、心理学にも興味が湧き、深く学びました。感情や喜怒哀楽が遺伝子から作られるタンパク質と密接に関係しているということを知ったのが、動物と心理学が結びついた瞬間でした。
 マウスもさまざまな行動を示しますし、子育て行動もしますので、マウスの実験でわかったことは、一部、マウス以外の動物へ応用できます。マウスの実験で行動のメカニズムを証明することができれば、身近な動物の行動の仕組みも理解できるかもしれません。動物の行動に興味があるあなたにピッタリな分野だと思います。

先生の学問へのきっかけ

 生物学と心理学が好きだったことがきっかけで、応用動物学の分野に進みました。実験に使用する動物が遺伝子の変異によって行動が変わること、目に見えない感情や行動が遺伝子からつくられる物質 (タンパク質) から生ずることなどから、遺伝子と行動の関係について深く研究していくこととなりました。ストレスを感じやすい遺伝的資質を持った動物でも、良い環境に身をおくことで、行動が変化することが実証されています。つまり、遺伝子と環境との関係についての研究は、私たちが豊かな心で生きていくためのヒントにもなるのです。

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今井 早希 先生がいらっしゃる
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