夢ナビ 夢ナビ

検索結果一覧へ戻る

講義No.09296

昆虫の生態から、環境を知り、生命の謎に迫る

幼虫の時期に決まるクワガタムシの一生

 立派なツノ(正確には顎)が人気のクワガタムシには、同じ種なのにツノの大きな個体と、ツノも身体も小さな個体とが存在します。十分な餌がある場所で育った幼虫は、闘争によって生き残るのに有利な大きな成虫となり、十分な餌を得られなかった幼虫は、小さく闘争をあきらめたかのような形になります。どちらのタイプとして生きるかの「スイッチ」が、幼虫期の生育環境によって切り替わるわけです。このように、昆虫は生育した環境条件に応じて形を変えることがあるのです。

環境によって切り替わるスイッチ

 日本には明瞭な四季がありますが、南方(熱帯や亜熱帯)には環境の季節的変化がほとんどない地域もあります。南九州地方では、しばしば熱帯や亜熱帯から侵入した害虫が問題になります。これらの昆虫は、冬でも暖かい南方に適応した生態をもつため、南九州に定着できるかどうかはわかりません。この原因の一つは、通常の昆虫が持っている環境の季節的変化を日長の季節的変化から予測して夏モードから冬モードに形を変えるシステムを南方性昆虫は進化させていないことです。
 昆虫の体内には、たくさんの種類の微生物が暮らしており、宿主の昆虫が持っていない機能を昆虫に提供しています。しかし、このような微生物の中に突然変異を起こして宿主のオスとメスの比率(性比)をメスばかりに偏るような操作をするようなものが出てきました。ここでも、昆虫の個体における性を決定しているスイッチが環境(微生物への感染)によって切り替えられたわけです。

ヒトの研究とのつながり

 昆虫もヒトも、環境情報は神経や脳で伝達・処理され、それがホルモンを介してスイッチ(遺伝子)に働きかけ、その結果として形が変わると言えます。つまり、昆虫を研究することでヒトに役立つことは少なくありません。例えば、ヒトと昆虫に共通の仕組みがあるけれど、ヒトでは研究できない場合、昆虫を使ってわかったことがほとんどそのままヒトにも当てはまり、病気の原因の解明に役立てられることがあるのです。


この学問が向いているかも 昆虫学、昆虫生態学、応用昆虫学、生物学

南九州大学
環境園芸学部 環境園芸学科 教授
新谷 喜紀 先生

メッセージ

 昆虫の研究は、単に「虫」のことを知るためだけのものではありません。昆虫の生態を通じて、生物と環境との関わりや、生命の進化にまで迫れるのです。つまり、昆虫は環境の変化が生物に及ぼす影響を考えるうえで良い材料となっています。もしもあなたが、この分野の研究に興味があるなら、理系科目、特に生物をしっかり学ぶようにしてください。そして、野外にいるときには、いろいろな生き物の様子を観察してみましょう。温暖化が進む今、私たちの身の回りの生態系も徐々に変化しています。そのことに気づくだけでも、大きな収穫です。

先生の学問へのきっかけ

 雪国の町で子ども時代を過ごしました。近所には子ども用の遊び場がなかったものの、自然が豊かだったので、虫とり遊びが大好きでした。冬場は大好きな虫とりもできなくなりますが、厳しい冬が過ぎて春が訪れると、死に絶えたように見えた虫たちがどこからともなく現れるのを見て、とても不思議に感じていました。
 大学の理科系に進学し、専門分野を決定する際、時流に乗ってコンピュータ分野に進もうかと迷いましたが、子ども時代からの昆虫好きの気持ちが勝り、昆虫学の研究に進む決心をしました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

農業関連各種/環境調査会社研究員/害虫駆除業者/理科教員/公務員

大学アイコン
新谷 喜紀 先生がいらっしゃる
南九州大学に関心を持ったら

 南九州大学は、豊かな自然と温和な気候に恵まれた南九州の環境の中で、創造性に冨み、人間性と社会性豊かな人間を育成するとともに、食・緑・人に関する基礎的、応用的研究をすすめ、専門分野において社会に貢献できる人材を育成します。
 また、卒業する学生全員が、笑顔で社会人生活へと踏み出せるよう、入学直後から学生一人一人に対応した丁寧で確実な就職サポートをしていきます。
 さらに、各学部・学科の専門分野に不可欠な資格から、一生自分を支えてくれる国家資格まで、多岐にわたる資格取得のサポートを行っています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

TOPへもどる