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講義No.09291

子どもを育む音響設計~建築音響による言葉の発達に適した空間づくり

子どもたちが一日の大半を過ごす保育室の環境

 騒がしい場所では、すぐ隣にいる人の声ですら聞き取りにくいことがあります。大人でもそうなのですから、言語習得の真っ最中である乳幼児にとって、言葉がはっきり聞こえない環境下で過ごすのは好ましくありません。
 改善策は音響設計、すなわち音を吸収する吸音材を十分に施工して室内の響きを低減することですが、国内の保育施設の多くは吸音材が全く使われておらず、声や物音が反響し合い、室内の騒音は走行中の電車内よりも大きい80~90dB(デシベル)に達することがあります。これでは言語習得ばかりでなく、聴力や情操の発達にも悪影響を与えかねません。

「音環境」に注目してこなかった日本の保育施設

 WHO(世界保健機関)は小学校および保育施設の室内騒音の許容値を35dB以下としており、アメリカやヨーロッパ主要国は、それに準じたルールを設けています。ところが日本の場合、「音環境」についてあまり注目されておらず、小・中学校に対して甘めの騒音基準が定められているだけで、保育園には音に関するルールがありません。そこで、日本建築学会に所属する建築音響の専門家が中心となって、保育施設における「音環境」の基準作りを開始しました。

吸音材で、子どもたちの集中力がアップ

 WHOによれば、声や物音の「残響」が0.6秒を超えると言葉が聞き取りにくくなりますが、保育室で音響対策を施さない場合、0.8~1秒の残響が確実に生じます。そのせいで言葉が聞き取りにくくなり、保育者や子どもたちはより大きな声を出し、それがまた部屋に響いて全体の音量が上がるという悪循環が起きてしまいます。
 これについて、吸音の効果を実証する研究の取り組みが進んでいます。実際の保育室に吸音性のある繊維ボードを天井に仮設して、室内を「音が響かない空間」にする実験では、「吸音材あり」のグループはそうでないグループと比較して、3~5歳児の音節の認識率が10%ほど高く、言葉への集中度は20~30%も高いという結果が出ているのです。

子どもを育む建築音響設計

夢ナビライブ2018 福岡会場

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子どものための音の基準

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音は壁を浸透する

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建築音響でどれだけ聞きとりの結果がわかる

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この学問が向いているかも 建築学、建築音響学、建築環境工学

熊本大学
工学部 土木建築学科 建築学教育プログラム 教授
川井 敬二 先生

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メッセージ

 私は建築学の中で音を専門としています。建築というと美しいデザインや地震に強い構造設計などが注目されますが、もともと建築とは人間が健康で快適に過ごせる空間づくりから始まりました。その快適さのために音はとても重要な要素です。波動現象である音は壁を抜けて伝わってきます。外からの騒音をいかに防ぐか、いかに室内の響きを最適に設計するかなど、私たち建築音響の専門家は音の物理を理解し、建築に実践しています。建築をめざして大学に入ったら建築音響分野もしっかり勉強して、将来は音のわかる建築家になってください。

先生の学問へのきっかけ

 音に関する一番古い記憶は、子ども時代に聞いたヒバリのさえずりです。鳴き声の主を探して、ようやく見つけた時の感動を今でも覚えています。また高校時代の受験勉強の夜は、列車の音が寒い夜だけ近くを走っているように聞こえる、音の屈折現象を経験的に知っていました。大学に入り、化学系の学科に進むつもりでしたが、スペインのサグラダ・ファミリア大聖堂をテレビや映画で見て、建築学科を選択し、建築音響という道を進んでいました。何がきっかけというよりも、子ども時代に芽生えた、音への関心が、私の中に生きていたのでしょう。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

総合建設会社/音響設計事務所/公務員

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川井 敬二 先生がいらっしゃる
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 熊本大学は、「総合大学として、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的、及び応用的能力を備えた人材を育成することにより、地域と国際社会に貢献する」という理念に基づき、地域のリーダーとしての役目を果たしています。かつ、世界に向け様々な情報を発信しながら、世界の学術研究拠点、グローバルなアカデミックハブとして、その存在感を高める努力をし、教育においては、累計30件にも及ぶ「特色ある教育プログラム」が優れた取り組みとして文部科学省から認定され、その教育力の高さと質の高い教育内容は定評のあるところです。

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