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講義No.09182

放射線で考古学の遺物を分析できる!?  素粒子ミュオンの可能性

放射線は考古学でも活用できる

 放射線には、飛んだ粒子がものを突き抜ける特性があり、物質の分析を行う研究に活用されています。対象を壊さずに、中にどんな物質があるかがわかります。エックス線が有名ですが、ミュオン(ミュー素粒子)を使った分析も注目されています。ミュオンは50万分の1秒で壊れてしまいますが、壊れたときに出る光によってその物質が何であるかがわかるのです。考古学の史料として発掘された遺物でもそのままの形で中身を分析することができるので、博物館でも活用されています。

ミュオンで遺物を分析する方法

 例えば2000年前の銅鐸(どうたく)が発掘されたとします。文明の発達の仕方を探るために、それがどこでどのように作られたものかを解明しようとするのですが、このとき考古学者が知りたいのは成分が何かということです。表面はさびていますが、サビになりやすい成分となりにくい成分があるので、サビだけ分析しても中身は特定できません。しかも貴重な資料なので削ったり穴をあけたりせずに分析する必要があります。そこで素粒子のミュオンを打ち込んで、止まったところで壊れて出す放射線の色によって物質を特定していくのです。炎色反応と同様に、元素によって色が変わるからです。またミュオンの優れたところは、磁場で分離することによって勢いを変えることができ、対象の深さに応じて細かい分析ができることです。しかし、寿命が短く、実験にはたくさんのミュオンが必要なので、日本国内にも大量にミュオンを作り出す実験設備が作られました。この手法は世界的に注目され、ヨーロッパでも追随する動きが出ています。

火山や小惑星も分析できる!

 ミュオンで分析できるものは大きさを選びません。火山やピラミッドのように、大きくて中に入ることが困難なものも分析が可能です。また小惑星探査機はやぶさ2が採取してきた土を、カプセルを閉じたまま外気に触れさせることなく分析し、宇宙の生命の起源を探る研究にもミュオンが使われたのです。


この学問が向いているかも 放射化学

国際基督教大学(ICU)
教養学部 アーツ・サイエンス学科 教授
久保 謙哉 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 私の専門は放射線や放射性物質を扱う放射化学です。寿命が50万分の1秒という素粒子のミュオンを使って物質を分析しますが、たとえ考古学的な資料でも、どんな物質でできているかを、壊さずに分析できるのが特徴です。
 私が取り組んでいるのは化学と、ほかの分野との共同研究です。共同研究ではリベラルアーツを元にしてほかの分野の人たちとお互いどんな新しいことができるか、何が問題でどう解決できるのかを考えていきます。あなたも幅広い分野に関心があれば、リベラルアーツを特徴とするICU(国際基督教大学)に来てください。

先生の学問へのきっかけ

 小学生の頃に実験キットの付録が付いてくる月刊誌を買ってもらい、いろいろな実験をして楽しみ、理科への関心が高まりました。大学も理系に進み、卒業研究のテーマを決めるときに、ほかの人がやらないようなことをしたいと思い、放射線を使う研究室を選びました。メスバウアー効果という面白い言葉の響きを持つ現象が、放射線に関係していたことも理由の一つです。大学院生の時にミュオンという素粒子を使う実験ができるようになりました。そして世界最高の実験施設が動きだすときに、ミュオンを物質の分析に利用する研究を始めたのです。

大学アイコン
久保 謙哉 先生がいらっしゃる
国際基督教大学(ICU)に関心を持ったら

 ICUは教養学部1学部の中に31のメジャー(専修分野)を設けています。学生は入学時に専攻を定める必要がなく、入学後に様々な科目を履修し、自分の関心を見極め、2年次の終わりまでにメジャーを決定します。メジャーには、文学、物理学、心理学などの伝統的な学問分野と、「平和研究」「アメリカ研究」などの問題解決型や地域研究型があります。どの分野も、他大学の学部に相当する科目群を配し、専門を系統的に学ぶことができます。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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