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講義No.09169

とんがった時代の『クリスマス・キャロル』

クリスマスに怪談を読む?

 怪談や怖い話といえば、日本では夏のイメージですが、19世紀のイギリスでは冬に怪談や怖い小説を読む習慣がありました。毎年、クリスマスになると、雑誌ではそのようなクリスマス・ストーリーの特集が組まれたのです。1843年に、その一編として発表されたのが、イギリスの国民的作家チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』です。けちで冷酷な主人公が、過去・現在・未来の自分の姿を見て、心を入れ替えるという他愛無い物語ですが、当時は大人気を博しました。一体、ディケンズは何を訴えたかったのでしょうか。

イギリス人が大事にする経済的自由

 ディケンズの作品を読むと、一生懸命働いて、よい人に恵まれて、最後は幸せになる、というパターンが見受けられます。その土台となったのが『ウィッティントンと猫』という立身出世の民間伝承やホガースという18世紀の画家の作品でした。そこから、「イギリスらしさ」を見てとることができます。例えば、「自由」というと、フランスでは政治的に、ドイツでは哲学的・芸術的にとらえられますが、イギリスでは経済的自由を意味します。人々は所有権・財産権にこだわり、自分の努力と才能で経済的に成功すること、そして、自立し家庭を営むことを夢見るのです。ディケンズ作品は、そんなイギリス人の集合的無意識の下に成立したのです。

理想の家庭像・主人と召使の関係

 経済的な成功を夢見た人々が得たかったことは、二つあります。まず、幸せな家庭生活です。当時は経済的な理由から家庭を維持できない人々(その多くは労働者階級)が大半でした。この演出に一役買ったのが『クリスマス・キャロル』と当時のヴィクトリア女王夫妻です。二つ目は、スクルージーとボブ・クラチットに代表される理想的な主人・召使の関係です。世界史を思い出してください。1840年代のイギリスはチャーティズム時代といい労使が鋭く対立した時代でした。このようなとんがった時代では、よき家庭人、よき雇い主(企業人)が何よりも求められたのでした。

クリスマス・キャロルにイギリスを読む

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ディケンズとは?誰?

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『クリスマス・キャロル』について

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この学問が向いているかも 英文学

愛知県立大学
外国語学部 英米学科 准教授
榎本 洋 先生

メッセージ

 文学作品を研究するには、その背景に対するさまざまな知識が必要です。各国の文学史はむろん、歴史、地理、政治、経済、国際関係など多岐にわたります(時には理系の知識も)。
 日本は、そうした世界の文学を親しむのに恵まれた環境が整っています。世界文学全集というツールが何種類もあり、古代ギリシア語・ラテン語・フランス語・ドイツ語・中国語などで書かれたさまざまな作品を、日本語訳で読むことができます。そのような文化的な価値の蓄積は次世代に伝えるのに値します。文学は、知らない世界を垣間見せてくれる万華鏡なのです。

先生の学問へのきっかけ

 私は、イギリスのチャールズ・ディケンズを中心に英文学の研究をしています。物心ついた頃から家には本がいっぱいありました。そのせいか、子どもの頃から本を読むことには抵抗がありませんでした。そして、大学進学の際は、いろいろ迷った挙句の果てに英文学を選びました。もともと「異質なものに対する憧れ」があり、どのように英文学を楽しむかという姿勢で、これまで作品と向き合ってきました。

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榎本 洋 先生がいらっしゃる
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 21 世紀のグローバル社会、知識基盤社会、成熟した共生社会及び地方分権社会といった新しい時代の要請に応えるため、愛知県の公立大学として、研究者の高度の研究に裏打ちされた良質の教育を行い、国際社会と地域社会に貢献できる自立した市民を育成することを目標としています。
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