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講義No.09058

紙のスマートフォンも登場? セルロースナノファイバー研究

日本発の材料開発「セルロースナノファイバー」

 私たちのまわりにはたくさんの「植物繊維」があります。例えば、紙は木や古紙などから得られるパルプで作りますが、その主成分であるセルロース繊維は髪の毛程度の太さ(数十マイクロメートル)です。実は、このセルロース繊維はナノレベルの微細な繊維(幅4~15ナノメートル)であるセルロースナノファイバー(CNF)の集合体なのです。
 CNFは、化学的な前処理方法と、繊維をほぐして取り出す研究などの画期的な精製手法が、2000年頃から世界に先駆けて日本から発信され始め、その後、材料開発が活発になりました。

「透明」だけじゃない、ナノペーパーの実力

 このCNFで作ったナノペーパーは、「透明」です。そもそもセルロース繊維は透明ですが、普通の紙は繊維間の数マイクロメートルの隙間で光が散乱し「白く」見えています。しかしナノペーパーはこの隙間が可視光の波長よりも小さくなるので、光が乱反射せず高い透明度を示すというわけです。
 また、透明であるだけでなく、ナノペーパーには高い強度・耐熱性・耐薬品性・誘電率・絶縁性、そして自然環境で微生物などに分解される性質(生分解性)など多くの特性があります。これらを生かして電子デバイス部品の基板やアンテナ、メモリ、タッチパネルなどのパーツが開発されており、「ペーパースマートフォン」など未来のものづくりの可能性が広がります。

「情報を持ち運びやすくしたい」という欲求

 人間は昔からいろいろなものに情報を記録してきました。最古は壁などの動かないもの、次に粘土板や石板、続いてパピルスや羊皮紙、木や竹、そして紙です。印刷技術の発明によって紙が記録媒体の中心になり、現代ではタブレットPCなどが台頭しています。
 この進歩の根底にあるのは「いかに情報を持ち運びやすくするか」という欲求です。次に来るのはナノペーパーでしょう。樹木をはじめとする植物資源は日本には豊富にあり、何より環境負荷が低いことからみても、これは必然と言えるのです。

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この学問が向いているかも 材料化学

大阪大学
産業科学研究所  教授
能木 雅也 先生

メッセージ

 私たちの身のまわりには、紙があり、鉛筆があり、そしてテレビやスマートフォンもあります。これらの道具は何の関係もなく、バラバラに存在しているように思えます。しかし近い将来、これらすべてが木材のセルロースナノファイバーから作られるようになるかもしれません。
 大学で研究を行うと、このように「常識では考えられなかったこと」を「常識」へと飛躍させることが可能です。将来、あなたが大学での研究を通じて、夢と希望のある材料を開発することを期待しています。

先生の学問へのきっかけ

 私は脱脂綿の上にいろいろな種を置いて、水をやって芽が出るのをひたすら楽しむような小学生でした。そういう経験もあったからでしょう、大学は農学部で樹木を研究テーマにしました。そして「木がどうやってまっすぐ立っているか」を調べる中でセルロースナノファイバーに出会い、木の力を実感しました。CO2削減に貢献するとか、花がきれいだということで、木は評価されがちですが、人間の役に立つという視点ではなく、「木そのもののすごさ」を伝えたいという思いが、私の研究の背景にあります。

研究室
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能木 雅也 先生がいらっしゃる
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 自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。

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