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講義No.09003

米粉パンを小麦粉パンと同じようにふっくらさせるには

小麦アレルギーの人でもパンを食べられる?

 小麦粉のパンには、アレルギーの原因であるグルテンが含まれています。一方、米粉を使えばアレルギーは起こりませんが、グルテンがないためパン特有の膨らみがでません。そこでパンをふっくらさせるために、米粉パンには増粘剤が使用されています。増粘剤を使うとふっくらしますが、独特の臭いがします。また、添加物を嫌う人もいます。

米粉パンをふっくらさせる方法

 小麦粉パンが膨らむのは、発酵で生じる炭酸ガスがグルテンの網目の中に入り込み、生地に保持されるからです。しかし、製粉を工夫すると、グルテンや増粘剤がなくても米粉だけで膨らむことがわかってきました。米粉は5マイクロメートル程度のデンプンの粒子でできていますが、それが発酵でできる炭酸ガスの周りに吸着することで、気泡を保持できるのです。
 吸着の秘密は「表面張力」にあります。二つの物体、今の場合「ガス」と「液状の生地」の境界を界面といいます。界面近くの分子は、両側の物体の中の分子とは異なる振る舞いをします。そのために、界面には余計なエネルギーがありますが、自然界はエネルギーの低い状態を好みます。表面張力は、余計なエネルギーを持つ界面を少なくしようとして、表面積を縮める力です。界面活性分子が液中にあると、それらが界面吸着してエネルギーを下げ、表面積を縮めなくてもすみます。デンプンの小さな粒子が界面活性剤のように炭酸ガスの周りに吸着することで、気泡を安定にするのです。

界面の特殊な性質の利用

 製粉時の摩擦熱で米粉はダメージを受け、デンプンの成分であるグルコースに分解されやすくなります。そうなった米粉は炭酸ガスの周りに吸着し難くなります。しかし、適切な製粉で米粉パンを作ると、小麦粉パンと同じ程度に膨らませることができるのです。
 界面の特殊な性質を生かした製品は、ほかにも身近なところにあります。洗剤やマヨネーズ、自動車の排ガス浄化用触媒もそうです。また、今後発展する電気自動車のバッテリーや水素貯蔵にも関わっています。


この学問が向いているかも コロイド・界面化学、物理化学

広島大学
総合科学部 国際共創学科 准教授
ヴィレヌーヴ 真澄美 先生

メッセージ

 私の専門は、コロイド・界面化学です。高校生の時に「ミセル」について教わり、分子が比較的弱い引力で集まってできる物体に興味を持ちました。ミセルとは、分子内に水となじみやすい親水性の部分と油となじみやすい親油性の部分とを併せ持つ界面活性剤分子が、十~数百個集まったものです。化粧品や自動車の排ガス浄化用触媒など、生活のいろいろな所にその原理が応用されています。
 この研究は複数の分野をまたぐものですが、その学際的なところに面白いことがたくさんあります。大学ではいろいろなことに興味を持って勉強してください。

先生の学問へのきっかけ

 高校の授業で界面活性剤分子がつくるミセルコロイドに興味を持ち、化学の世界にのめり込みましたが、界面にある分子の特殊な振る舞いは、化学の知識だけでは理解できませんでした。大学3年生までは有機化学合成を研究しようと思っていましたが、有機化学の授業でもギブズエネルギーという言葉を何度も耳にし、これがわからなければ化学は始まらないと考えました。そこで4年生の卒業研究では、有機化学だけでなく物理化学も視野に入れて、「物理化学講座」という研究室を選択しました。物質の科学には化学、物理の垣根はありません。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

化学メーカー研究員/塗料会社研究員/自動車メーカー研究員/化学分析会社研究員/機械メーカーマーケティング/精密機器メーカーセールスエンジニア/大学教員/高等学校理科教諭/中学校理科教諭

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ヴィレヌーヴ 真澄美 先生がいらっしゃる
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 広島大学は社会に貢献できる優れた人材を育成し、科学の進歩・発展に貢献しつつ、世界の教育・研究拠点を目指す大学です。緑豊かな252ヘクタールという広大な東広島キャンパスを抱え、また、国際平和文化都市である広島市内等のキャンパスを含め、12学部、11研究科、1研究所、大学病院並びに11もの附属学校園を有しています。 新しい知を創造しつつ、豊かな人間性を培い、絶えざる自己変革に努め、国際平和のために、地域社会、国際社会と連携して、社会に貢献できる人材の育成のために発展を続けます。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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