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講義No.08895

仮想空間の中で、ぴったりフィットの服の設計

服を作るのに不可欠な型紙

 私たちが普段の生活で身にまとっている服は、設計に基づいて作成した型紙(パターン)に沿って布地を切り取り、服の部品となるそれらの布地を縫い合わせることによって作られます。型紙を作る方法は、大きく分けて2つあります。
 1つは、平面上で作図をして型紙を作る「平面作図法」です。長年にわたってさまざまなノウハウが蓄積されているこの方法は、型紙作成用のCADソフトウェアによって効率的な型紙設計が可能で、異なるサイズのバリエーションの型紙を作ることも容易になっています。

立体裁断を仮想空間でシミュレート

 もう1つの方法は、「立体裁断法」です。作業用の人台(じんだい)に布を当てて沿わせ、完成時に立体的なフォルムになるような形の型紙を作ります。こちらの方が、着る人の身体にぴったりフィットする服を作りやすいのですが、仮縫いと試着と修正を何度も繰り返すことになり、時間とコストがかかるのが難点です。
 そこで今、研究されているのが、仮想空間(バーチャルリアリティ)の世界で立体裁断の作業をできるようにするという仕組みです。赤外線センサーを取り付けたヘッドマウントディスプレイを利用して、作業者が両手を動かすと、仮想空間の中で布を手にして人台に当てている状態を再現できます。仮想空間の中での布の当て具合によって、衣服を形作るための立体形状が、平面の型紙形状にリアルタイムで反映されるのです。

変わる未来の服作り

 これが実用化されると、服作りはさらに進化したものになります。自分の体の形を土台にして、仮想的に衣服の設計を行います。自分がそれを着た状態を見ることができ、出来映えに満足できれば、データをそのまま工場に送ります。すると自分だけの、自分にぴったりの服が送られてくる、というわけです。一人ひとりにぴったりフィットする、長く着続けられる服を誰もが気軽に手にできるというような、ファッションの潮流が大きく変わる可能性があるのです。

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この学問が向いているかも 感性工学

信州大学
繊維学部 先進繊維・感性工学科 教授
乾 滋 先生

メッセージ

 近頃AIという言葉を耳にする機会が多く、中には不安を感じている人もいるかもしれません。でも「正しく」勉強しておけば大丈夫です。「正しい」勉強とは何でしょうか。これまでは「解き方」を一生懸命に勉強してきたのかもしれません。でもコンピュータは問題を解くのがとても得意なので任せておけばよいのです。それよりも自分が今取り組んでいる問題がどういう意味を持っているのか、ということを深く理解することがもっと重要です。ものごとの意味を考えてしっかりと学んでいってください。

先生の学問へのきっかけ

 小さい頃から機械や電化製品をいじるのが好きで、よくいろいろなものを分解して調べていました。ちょうどその頃は、テレビが家に普及しはじめたり、人類が月まで到達したり、やがてコンピュータも登場したりと、それまでになかったものが次から次へと現れてきた時代でした。その影響もあって大学では機械工学について学び、その後、研究所で衣服のシミュレーションについての研究に携わるようになりました。現在は、ファッションを工学的なアプローチで研究しています。

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乾 滋 先生がいらっしゃる
信州大学に関心を持ったら

 信州大学は、人文・教育・経済・理学・医学・工学・農学・繊維の8学部からなり、すべての学部に大学院が設置されています。教員は約1千人、在学生数は約1万1千人で、世界各国からの留学生約400人も意欲的に学んでいます。松本、長野、上田、伊那に位置するいずれのキャンパスも、美しい山々に囲まれ、恵まれた自然のもと、勉学にも、人間形成の場としても、またスポーツを楽しむにも最適の環境にあります。さらに、地域との連携がきわめて良好であり、地域に根ざした大学としての特色も発揮しています。

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