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北海道医療大学の教員による講義

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薬がなぜ効かない? ~異物の進入を制御するP-糖タンパク質の働き

薬の生体内運命を解明する「薬剤学」

 医学の進歩とともに難病とされた疾患にも有効な薬が開発されるようになり、医療の中で薬はますます大きなウェイトを占めています。しかし、同じ薬を服用しても効き目に差があったり、副作用が出たり出なかったりと、薬に対する患者さんの反応はさまざまです。薬学の研究領域の一つである「薬剤学」では、薬が体内でどのような運命を辿りながら治療効果を発揮するのか、また薬の作用や副作用の違いを引き起こす要因は何かなどを解明し、効率的な新薬の開発や、医療現場での薬の適正使用に貢献しようとする研究が行われています。

異物の進入を制御するP-糖タンパク質

 人体にとって化学物質である薬は基本的に異物です。私たちの消化管には、異物の吸収を水際で阻止するための門番の役割を果たすP-糖タンパク質(P-gp)というトランスポーターが存在しています。どんなに優れた薬が開発されても、このP-gpに認識されてしまうと体内にはごく一部しか吸収されず、想定された治療効果が得られません。P-gpはがん細胞や脳、肝臓、腎臓などにも存在し、薬の生体内運命を制御しています。P-gpの働きは、遺伝的素因や併用薬、サプリメント、食習慣などにより強まったり弱まったりし、治療効果の変動や副作用の引き金になります。そこで、P-gpを徹底的に研究し、P-gpの働きをコントロールすることが重要です。

より安全に、効果的に薬を使うために

 薬は、血管に注射すれば100%吸収されます。しかし経口薬(飲み薬)の場合は、100%のときもあれば、10~20%、時にはほぼ0%のこともあります。薬の投与量は吸収率を踏まえて設定されますが、薬の低い吸収率に前述のP-gpが関与していると、相互作用や予期せぬ副作用の発現に繋がるおそれがあります。長寿社会、高度医療社会においては、薬の開発だけでなく、その安全性と有効性を高めて医療現場で安心して使えるよう薬の生体内運命をコントロールすることが必要不可欠なのです。

この学問が向いているかも 薬学、薬剤学


薬学部  教授
齊藤 浩司 先生

メッセージ

 薬は患者さんの病気の治療にはなくてはならないものです。錠剤やカプセル剤として投与された薬は、胃の中で溶け、主に小腸から吸収されて体の各部位に運ばれていきます。しかし薬の吸収率には大きな違いがあり、100%吸収される場合もあれば、ほとんど吸収されない場合もあります。
 その要因の一つに、異物処理という役割を担うトランスポーターの関与があります。これは小腸のほかに脳や肝臓、腎臓など至るところに存在し、私たちの体内で薬の動きを制御しています。そのトランスポーターの働きについて、一緒に研究してみませんか?

先生の学問へのきっかけ

 将来は出身地で薬剤師として医療に関わりたいと思い、薬学部に進学しました。その後、薬剤師の資格を取って大学病院で働き、患者さんと直接ふれあう機会が増えたことで、薬の重要性を再認識し、薬剤学研究の道に進みました。
 アメリカの製薬会社研究所へ留学し、薬開発の難しさを体験したことが今の研究の基盤になっています。P-糖タンパク質の研究に出会ったのもこの留学がきっかけでした。新薬開発よりも、それを活用して患者さんを治すための研究により強くひかれたのは、やはり医療に関わりたいという根本的な願いがあったからです。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

総合病院臨床薬剤師

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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