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講義No.08619

過酷な環境で生きる「極限環境微生物」の未知なる力を狙え!

DNA分析の変革に貢献した「好熱菌」

 極端に温度の高い場所や低い場所、圧力の高い場所など、過酷な環境で生きることができる微生物を「極限環境微生物」と言います。こうした微生物は、通常の環境で生きている微生物は持っていない特長や能力を持っています。
 例えば、高い温度でも生きられる「好熱菌」は、持っている酵素なども全部その温度帯で壊れずによく働きます。好熱菌のDNA複製酵素(遺伝子を増やす酵素)を活用することで、それまで分析が難しかった痕跡程度のDNAが分析できるようになりましたし、そのおかげで、それまでDNAの研究に必須だった放射能もほとんど使わなくなりました。これは好熱菌の熱に強い酵素ならではの功績です。

活躍が期待される「好冷菌」「低温菌」

 好熱菌とは逆に、温度の低い環境でしか生きられない菌を「好冷菌」、温度が低い環境「でも」生きられる菌を「低温菌」と言います。好熱菌に比べ好冷菌や低温菌の酵素の研究は遅れていましたが、それをどのように利用するかというところまで研究が進んできました。発酵産業や環境保全などでは低温での酵素の利用が期待されています。
 一例として、バイオエタノール生産があります。海外ではバイオエタノールの原料としてトウモロコシなどの農作物が使われていますが、日本では食糧と競合して現実的ではありません。そこで今着目されているのは海藻です。海藻からエタノールを作る場合、まずは海藻の多糖類を溶かす必要があります。その溶け出てきた糖を酵母に発酵させてエタノールを作るのです。酵母が発酵するのは約20~25℃なので、その温度で活性が高い多糖類溶解酵素を低温菌の中から探しだすことができれば、直接、海藻からバイオエタノールが作れます。

まだまだわからない「好圧菌」「耐圧菌」

 現在、まだほとんど解明されていない圧力に強い「好圧菌」や「耐圧菌」の研究が注目を集めています。極限環境微生物は無数に存在し、しかもそれぞれが多彩なので、これからも研究しがいのある分野なのです。


この学問が向いているかも 極限環境微生物学、生化学

東京海洋大学
海洋資源環境学部 海洋環境科学科 教授
石田 真巳 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 私たちは地球の将来を支えていく必要があります。地球のため、人間のため、あるいは産業のために、地球環境をきれいにすることをめざす方向で、生物や化学を活用できると思います。
 微生物やその酵素は多彩で、能力的にもたいへんバラエティがあります。ある微生物の酵素にできないことが、ほかの微生物の酵素にはできるかもしれません。私は、その能力を見極めて、うまく条件を合わせてあげるから頼むよという気持ちで実験しています。微生物や酵素がこちらの期待に応えてくれたらうれしいですし、とても楽しく研究をしています。

先生の学問へのきっかけ

 高校時代から生物と化学が好きで、「両方が重なっているような分野を勉強したい」と思って、東京水産大学で微生物について学んだあと、生物と化学、微生物というすべての興味が詰まった東京工業大学の生命化学専攻に進みました。
 そこで選んだのは「好熱菌」を専門に研究していた大島泰郎教授の研究室でした。そこで好熱菌、特にその酵素のおもしろさに目覚めます。
 母校の東京水産大学の助手に就任し、海にまつわることをやりたいと思い、「好熱菌」とは真逆の低い温度の環境で活発に働く「好冷菌」の酵素の研究をはじめたのです。

大学アイコン
石田 真巳 先生がいらっしゃる
東京海洋大学に関心を持ったら

 東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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