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講義No.08601

「壊れるのを予想できる」から信頼されている、医療用材料とは?

医療分野で主に使われている材料は「金属」

 金属・セラミックス・プラスチック(高分子)は、「三大材料」と呼ばれています。医療材料としては、約2500年前、エジプトで金が人体構造維持のワイヤーとして利用されたのが始まりのようです。セラミックスやプラスチックにおいては、ここ30~40年で劇的に研究が進みました。その結果、この分野では、金属のシェアがどんどん奪われていきました。しかし、現在でも人工関節やペースメーカーなどの医療材料は、金属が主流で約70~80%を占めています。なぜなのでしょうか?

金属を使うメリットは「信頼性」

 医療用の材料に金属が使われるのは、「壊れるのを予想できる」という信頼性が高いからです。まず、プラスチックはそれほど強くないため、力がかかるところに使用するのは不向きです。一方、セラミックスは硬くて強い材料です。しかし、陶磁器を床に落とすと割れる場合もあれば割れない場合もあります。これは壊れるのを予想できないということです。
 一方、金属では原子同士が「方向性のない結合」で結びついているため、一部の結合が壊れてもまわりが原子レベルで少し変形することで、全体として壊れることはありません。結合が一気に壊れないので、全体として壊れるのを予想できます。

「異物」である金属を体になじませるには?

 硬い金属の人工関節を骨の近くに入れると、そのまわりでは新しい骨を作ろうとしなくなるため、骨がやせ細ってしまいます。それを防ぐには、その金属を骨と同じようなたわみ方をするように軟らかく作る必要があります。最近では、3Dプリンタを用いて金属の中にすき間を作ることで理想的なたわみ方を作り出すことができるようになりました。
 また、本来、ヒトの体内に金属は存在しないため、体の中に金属を入れると「異物」として認識されます。骨に似た性質をもつセラミックスをその金属にコーティングすることで、体をだまし、骨の再生を促進させる技術も開発されています。こうした工夫によって、より効果的な治療が実現されているのです。


この学問が向いているかも 生体材料学

関西大学
化学生命工学部 化学・物質工学科 教授
上田 正人 先生

先生の著書
メッセージ

 高校生のうちは、部活に打ち込んだり、友だちと遊んだり、とにかくいろいろなことを経験してください。陶芸やダイビング、スノボといったすべての経験が将来、必ず役に立ちます。私の経験上、骨折でさえ現在の研究にとても役立っています。
 そして、その経験を今の学習に結びつけてください。例えば、なぜプラスチックは加熱すると軟らかくなるのか、黒くなるのか、なぜ雪の結晶は六角形なのかなど小さな疑問をもつことから始めてみましょう。

先生の学問へのきっかけ

 高校生の頃は実は化学が苦手でした。しかし「パイロット」になる夢があり、何も考えず化学の知識を必要とする物質系の学科に進学し、大学2年のとき、その夢が実現できる可能性が見え、はじめて将来のことを深く考えました。
 目の前にある勉強に取り組む中で「軟らかくなったり、硬くなったり、形を記憶したり、さまざまな表情をもつ金属」に引かれていきました。
 幼い頃から「宇宙の端っこはどうなっているんだろう」とか、すぐに答えがでないことをいつも考えていたので、未知のことだらけの研究は性格にあっていたのかもしれません。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

医療デバイスメーカー研究員/素材メーカー研究員/電気機器メーカー研究員/化学メーカー研究員/製薬会社営業

大学アイコン
上田 正人 先生がいらっしゃる
関西大学に関心を持ったら

 1886年、「関西法律学校」として開学した関西大学。商都・大阪に立地する大学らしく、学理と実際との調和を意味する「学の実化」を教育理念に掲げています。2010年4月には、JR高槻駅前の高槻ミューズキャンパスと、大阪第2の政令指定都市である堺市の堺キャンパスと、2つの都市型キャンパスを開設。安全・安心をデザインできる社会貢献型の人材を育成する「社会安全学部<高槻ミューズキャンパス>」、スポーツと健康、福祉と健康を総合的に学ぶ「人間健康学部<堺キャンパス>」を開設しました。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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