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講義No.08503

大型トレーラーの横転、漁船の転覆事故を防ぐ「三次元重心検知理論」

なぜ、大型トラックは横転するのか

 大型トラックやトレーラーが横転する事故があります。運転ミスとされがちなのですが、実は法定速度内で適切に運転していても起こることがあるのです。その原因の多くは、「重心の位置」です。車は、重心の位置が低いほど安定し、高くなるほど不安定になります。重心が高いと、ゆるいカーブを低速で走っても横転してしまいます。コンテナや積荷の総重量は計算できても、車の重心の位置まではわからないのです。

揺れから重心の位置を算出

 車の重心の位置がわかり、カーブの半径がわかれば、横転しない速度が算出できます。ではどうしたら、重心の位置がわかるでしょうか? この難題を解決するヒントになったのが、船の航海術でした。大型船の場合、出航前に必ず船の重心の位置を計算します。船の設計図に積荷の重さや位置を足して、正確に算出します。重心の位置からどのくらいの波(=揺れ)に耐えられるかを計算し、航路を決めるからです。
 「重心から揺れを計算」できるのなら、その逆、つまり「揺れから重心を計算」することは可能です。そこで、大型トラックにセンサを付け、走行時の「揺れ」を感知し、そこから重心の位置を計算する方法が開発されました。それが「三次元重心検知理論」です。これを応用すれば、走行中の車の重心の位置から横転の危険度を推測し、運転手に警告することができます。

船から車へ、車から船へ

 船の航海術から生まれた「三次元重心検知理論」を、船に逆応用する研究も行われています。大型船ではあらかじめ重心の位置を計算しますが、漁船や観光船などは、行きと帰りで積荷の量が違うことも多く、重心がわからないまま航海することが少なくないからです。
 海は陸のように固定した道路を走るわけではないので、揺れの感知には陸とは別の技術が必要です。しかし、洋上での揺れが感知できれば、「三次元重心検知理論」によって、海での転覆防止に大いに貢献することは間違いありません。


この学問が向いているかも 海洋工学

東京海洋大学
海洋工学部 流通情報工学科 教授
渡邉 豊 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 いまは、自分は将来、何をしたらいいのだろうか、と悩むことが多いと思います。でも、そんなに焦って決めなくてもいいと私は思います。長い人生の中では、思わぬことがとても役に立つことがあるものです。「一体、何の役に立つのだろう」などと思いながら勉強したことが、5年後、10年後に大いに役立つことも決して珍しくはありません。
 ですから、好きなことにはもちろん一生懸命に取り組み、好きでないことに対しても、すぐに諦めたりせずに取り組むことが大切だと思います。

先生の学問へのきっかけ

 子どもの頃、「遠くに行く船乗りになりたい」と憧れを抱いていました。
 船の物流という切り口にひかれて東京商船大学に進学します。
 大学で助手として、大型船とコンテナについての研究に取り組んでいたある日、港で働く人々から、船から下ろしたコンテナを大型トラックや大型トレーラーで運ぶ時、原因不明の横転事故が起こるという訴えを聞き、そこで事故の原因を突き止め、防止システムの開発に取り組み始めます。陸の乗り物を研究対象にしましたが、原因究明と防止技術の開発に重要な役割を果たしたのが、専門である船の知識でした。

大学アイコン
渡邉 豊 先生がいらっしゃる
東京海洋大学に関心を持ったら

 東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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