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講義No.08489

「ここの空気はおいしい!」を、リスクの視点から考えてみよう

「空気の質」を意識する

 ニュースなどでディーゼル排気粒子やPM2.5の問題が取り上げられているのを、聞いたことがあると思います。これらは大気中に浮かんでいる、肉眼では見えにくい固体の物質で、健康への影響が懸念されていることから、超えてはいけない基準となる値が定められています。このように五感で認識しづらい空気の質は、日頃の生活の中ではなかなか意識されず、これらをどれくらい浴びると(ばく露評価)、どれだけ有害か(影響評価)という2つの観点から、好ましくないことが起こる可能性を数値化(リスク評価)し、政策に生かしていきます。

体の中に入ってからの運命も大切な要素

 ばく露評価では、どのような物質が、どのような経路で、どれだけ体内に入るかなどを、実測したり客観的なデータをもとにして算出したりします。体の中に入った後の分布や、体外に排出されるまでの速度なども大切な要素で、ダイオキシンのような油と仲のよい物は脂肪に長く蓄積し、アスベストのようにとがった物は、ある領域で留まったままとなり、これらの物としての特性が健康影響にも密接に関わっています。

コミュニケーションを通じた判断

 ばく露評価と影響評価の両輪によって導き出されたリスク評価値を参考にして、集団としての健康を守るための制度や仕組みを、行政や政治が政策として進めていきます。このような過程では、「安全か危険か」、「黒か白か」についての答えが求められがちですが、衛生工学やリスク工学の役割は、白黒をつけるのではなく、グレーを数値として示していくところにあります。
 行政が基準を設ける方法に対して、近年では個々の判断にも重きを置いた、コミュニケーション(リスクコミュニケーション)も重視されはじめています。遺伝子組み換え食物のような、影響を客観的に数値化しにくい事象については、個々の判断も大切になってきます。

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この学問が向いているかも 衛生工学、リスク工学

京都大学
工学部 地球工学科 環境工学コース 准教授
松井 康人 先生

メッセージ

 私の専門の「衛生工学」、「リスク工学」は、医師のように個々の人を診るのではなく、集団としての健康やその影響を客観的に数値化することができる学問です。多くの人の安全で快適な暮らしを支えることができるのが、これらの学問の魅力です。
 日本は人口が減少し、急激に高齢化社会を迎えています。高度成長期のように、数の力で乗り切ることは厳しい状況ですので、生産性を上げるための知恵と工夫が求められています。日本が近い将来に直面する課題を乗り越えるためにも、その知識と技術をあなたと一緒に学びたいと思っています。

先生の学問へのきっかけ

 小さい時にぜんそくを患っていたことも影響してなのか、吸い込む空気やそれにともなう身体の反応に興味がありました。私の中では、呼吸器が「外と直接つながっている」イメージがあり、特別な存在です。
 大学では人の体や健康影響について勉強したいと考えましたが、医師として個人に向き合うのではなく、集団をみることができる環境工学の世界に進みました。そこで学ぶ中で、工場などでの粉じんや化学物質による健康被害を知り、労働現場を守るための労働安全衛生工学を大学院で選んだのが、私の学問の入り口になりました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

官公庁・環境衛生管理/製造業・労働安全衛生/コンサル・研究員/インフラ・エネルギー開発

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松井 康人 先生がいらっしゃる
京都大学に関心を持ったら

 京都大学は、創立以来築いてきた自由の学風を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献するため、自由と調和を基礎にして基本理念を定めています。研究面では、研究の自由と自主を基礎に、高い倫理性を備えた研究活動により、世界的に卓越した知の創造を行います。教育面では、多様かつ調和のとれた教育体系のもと、対話を根幹として自学自習を促し、教養が豊かで人間性が高く責任を重んじ、地球社会の調和ある共存に寄与する、優れた研究者と高度の専門能力をもつ人材を育成します。

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