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講義No.08031

光によって、生体情報を引き出せ!

イリジウム錯体の発光現象

 発光現象には「蛍光」と「りん光」の2種類があります。蛍光に比べるとりん光は発光寿命が長く、低酸素下において紫外光線や可視光線を当てると発光するのが特徴です。通常低温で発光する化合物が多いのですが、「イリジウム錯体(さくたい)」という化合物は常温で強いりん光を出すまれな化合物です。錯体というのは、金属と非金属の原子が結合した構造を持つ化合物のことです。このイリジウム錯体を生物の中に入れることで、細胞内に酸素がどれくらいあるのかや、酸素がどのように使われているかなどを調べることができます。

どこが病気なのかを探し出せる!

 人間の血流中の酸素量はパルスオキシメーターという機器に指を差し込んで測ります。しかしこの機器は指先から体全体の数値を推し測っているに過ぎず、具体的に酸素の少ない部位を探すことはできません。実はがんや脳卒中、心筋梗塞(こうそく)などの病気を発症すると、病巣では血流が悪くなり酸素量も少なくなります。そのため、これらの病巣を探すのにもりん光が使えるのです。
 既に蛍光を用いてがんを探す外科手術支援技術が実用化されています。しかしこの技術は、蛍光を出す化合物を病巣に集積させる必要があるため、ほかの病巣を見つけにくい点がありますので、酸素に反応するりん光の方が汎用性には優れています。

光を使えばリアルタイムの観察が可能に

 光の技術は21世紀に入ってから革新的な進歩を遂げ、光ファイバーを用いた海底ケーブルで大陸間がつながれるなど、あらゆる面で生活を豊かにしています。
 検出機器の分野でも進化し、細胞内のカルシウムの濃度、体内で作られている酵素やたんぱく質の分析などで、何らかの発光する分子を「スパイ」として送り込み、その光を観察することで生体の情報を引き出す試みが行われています。光を使う方法は生物を生かしたまま、リアルタイムでの観察ができることが長所であり、今までわからなかった現象が解明されることが期待されているのです。


この学問が向いているかも 光化学

群馬大学
理工学部 物質・環境類(応用化学プログラム) 准教授
吉原 利忠 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 光化学は分子の発光が実際に見える、視覚的面白さがあります。この光を使い何か作るという意味では「ものづくり」の一面がありますし、理論的な予測も不可欠なため「数学の知識」も求められます。
 このように光化学に限らず、今やあらゆる学問の境界は曖昧なものになっています。そうした中、「物理は苦手だから、化学にしよう」といった消去法で分野を選ぶのではなく、広い分野の知識を満遍なく身につけ、それを自分が好きなことに生かそうという発想で、選択をしてほしいと思います。

先生の学問へのきっかけ

 大学生の時、「21世紀は光の時代になる」と聞き、光化学の研究に興味を持ちました。大学で、光化学の基礎を学び、ドイツに留学しました。帰国後始めた有機ELディスプレイの研究で、イリジウム錯体と出会いました。
 また、光を使って、生きた細胞を調べる研究にも興味があり、そちらも少しずつ進めていました。イリジウム錯体は、酸素によって発光の様子が大きく変化する特徴があり、これを使えば体内の酸素の状態を測定できると考えたのです。つまり、2つの全く異なる研究を融合して新しい研究としてスタートさせました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

化学メーカー研究員/製薬会社研究員/化粧品会社研究員

大学アイコン
吉原 利忠 先生がいらっしゃる
群馬大学に関心を持ったら

 群馬大学は北関東を代表する総合大学として、優れた人材を育成し、学問の研究と応用、福祉への貢献など、社会的使命を果たすことを特色としています。「社会のニーズに配慮しつつ細分化から総合化へ」という理念を研究面、及び教育面に具体的に実現させ、「研究活動面における社会との連携及び協力」に高く評価される形となって生かされています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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