人間の悩みはすべて対人関係の悩み
「アドラー心理学」は、オーストリアの心理学者アルフレッド・アドラーが提唱して発展した心理学体系です。ほかの心理学が人間の心理を分析することに重きを置いているのに対し、アドラー心理学は人間関係を考えることを重視しています。アドラーは「人間の悩みはすべて、対人関係の悩みである」と述べました。心ではなく人間関係を変えるためのさまざまな知恵を提案するのが、アドラー心理学の特徴です。
自分の課題? 相手の課題?
アドラー心理学の中で、特に日本でその位置付けが整えられた考え方が「課題の分離」です。自分とほかの誰かとの間に何か問題が起こって、人間関係がうまくいかなくなった時、その課題は自分自身の課題かそれとも相手の課題か、と分離して考えます。自分の課題であれば解決する方法を考え、相手の課題であれば相手に任せてしまうのです。例えば、あなたが学校のクラスで友だちとうまくいかない場合、友だちが自分のことを好きかどうかは友だちの課題なのでどうしようもありません。ですから、「友だちに嫌われないようにするにはどうすればいいか」と考えるのではなく、「自分はクラスの中で何ができるのか」を考えて実践すればいいのです。
相手を認め、尊敬することが基本
「課題の分離」という考え方は、課題を抱えている相手を冷たく突き放すことではありません。むしろアドラー心理学は、相手を認め、尊敬することを重視しています。何か困った問題を抱えている人がいたら、「助けてもいいですか?(May I help you?)」と聞いて、「大丈夫です」という返事ならしばらく見守り、それでもまだ困っているようなら、再び「助けてもいいですか?」と聞きます。それで、もし「助けてください」と言われたら、力を貸すようにするのです。
アドラー心理学の考え方について、私たち一人ひとりがより理解を深めれば、世の中にあるさまざまな問題がよりよい方向に向かうかもしれません。