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講義No.07331

ブラックホールの謎を解き明かす「マルダセナ予想」とは?

一般相対性理論が破綻する領域

 ブラックホールとは、極端に強い重力によって時空を強くゆがめている存在です。物理学では、そのゆがみによって「事象の地平面」と呼ばれる領域よりも中に落ち込むと、光の速さでも外に出られないと考えられています。一方、イギリスのホーキング博士は、ブラックホールは少しずつ粒子などを放出する熱を持った存在でもあることを理論的に説明しました。極端に重力の強い状況下では、アインシュタインの「一般相対性理論」による説明が破綻するため、ブラックホールの中で何が起こっているのかを解明するのは難しいと考えられていました。

超弦理論とホログラフィック原理

 物質の最小単位・素粒子を、点ではなくひものような「弦」としてとらえる「超弦理論」は、重力の量子力学的な効果を正しく記述できる理論になると期待されています。アメリカのマルダセナ教授は、超弦理論の中で「ホログラフィック原理」が実現できると予想しました。ホログラフィック原理とは、2次元の情報がホログラムのように立体的に投影されたものが3次元の存在だという考え方です。この「マルダセナ予想」から考えれば、「ブラックホールの事象の地平面付近の時空の物理」は、「弦のミクロな揺らぎを示す物理」と対応しているため、3次元空間に存在するブラックホールの熱的物理量が2次元球面である事象の地平面で計算できると推測できます。

根源的な謎を解き明かす鍵?

 マルダセナ予想を検証する研究はこれまで数多く行われており、特に日本の研究では、マルダセナ予想に基づく「ブラックホールの質量と温度の関係のコンピュータでの計算値」が、「超弦理論における重力の量子力学的な効果の近似計算結果」と一致することが確認されました。
 これらの研究は、ブラックホールにまつわる謎の解明だけでなく、重力の量子力学的な効果の観測・検証の可能性や、宇宙の始まりや時空の本質という根源的な課題への挑戦にもつながるのではないかと期待されています。

参考資料
1:特殊相対性理論の世界
2:超弦理論入門

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この学問が向いているかも 理論物理学、素粒子物理学

茨城大学
理学部 理学科 物理学コース 准教授
百武 慶文 先生

メッセージ

 物理学や数学の勉強では、とことん自分の頭で考えてみてください。いろいろな知識も必要ですが、今の自分が持っている知識を基にどれくらい考えられるかということも重要だと思います。自分なりに何かの答えを出すことができれば、それはとても記憶に残りますし、自分のものになります。人から結論まで教えられて理解するのと、自分で結論までたどり着くことには、天と地ほどの差があると思います。自分で考えてみることを常に意識しながら、勉強や研究に取り組んでみてください。

先生の学問へのきっかけ

 高校生の時、クラスの担任が3年間同じ物理の先生でした。その先生は、生徒に知識を暗記させるのではなく、基礎的な方程式などをしっかり教えてくれる方で、前提の少ない、人間の感覚があまり入り込まないようなところから出発して、我々がよく知っているような経験を導き出すことを私は学びました。その後、進学した大学には素粒子研究でトップレベルの方々が多く、私も自然な流れでその道に進みました。当時取り組んでいた重力に関する研究が、素粒子の世界で重力について考える今の研究にも役立っています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大学など研究員/高校理科教員/電気メーカー開発/情報関連企業技師/建造物など検査技師/金融工学開発

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百武 慶文 先生がいらっしゃる
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 茨城大学は、人文社会、教育、理、工、農の5学部からなる中堅的地方総合大学です。校地は水戸・日立・阿見の3地区に分かれており、各キャンパスとも学生を中心とした環境づくりを進め、教育研究施設の充実を図っています。幅広い教養教育と高度の専門教育により専門家として自立できる人材を育成するため、学部・大学院にて多様な学習の場を用意し、各分野で世界を先導する研究活動を推進しています。

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