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講義No.07295

ポリフェノールで卵子が若返る!?

求められる牛の高齢出産

 牛は2~3歳で最初の出産をし、何度か出産を繰り返した後、10歳を超えたあたりから繁殖能力が落ちてきます。妊娠期間は人間とほぼ同じ10カ月程度ですから、1、2頭子牛を産んで繁殖牛としての評価が決まったときには、もう7~8歳ということになります。しかし良い繁殖牛であれば数多く跡取りを残したいですし、そもそも牛は20年ほど生きる動物ですから、高齢になっても安全に健康な子牛が望めれば、願ってもないことだと言えます。

老化の原因はミトコンドリアの劣化

 新たな繁殖技術として考えられているのが、卵子を若返らせる方法です。生物の体内ではエネルギーを生み出すミトコンドリアが合成と分解を繰り返しているのですが、高齢になるとそのサイクルが停滞し、質の悪いミトコンドリアが増えてしまいます。さらにエネルギーを作る際に発生した活性酸素が細胞にダメージを与えてしまいます。これがいわゆる老化のメカニズムで、卵子の中でも同じことが起きています。
 しかし赤ワインに含まれるポリフェノールの一種であるレスベラトロールを与えると、ミトコンドリアの新陳代謝を刺激することができます。高齢な牛の場合、40%程度の確率で異常な受精を起こしてしまうのですが、卵子を若返らせると異常が10~20%に抑えられるようになります。

ヒトの未来につながる牛の研究

 この技術の応用として見込まれているのが、ヒトの生殖技術です。晩婚化が進み、今やクラスに1人は生殖補助技術の恩恵を受けている時代になってきています。畜産における生殖技術の研究は、ヒトの生殖技術の下地となっているのです。
 また今後は絶滅に瀕した野生動物を救う手段としても、選択肢のひとつになってくるでしょう。絶滅危惧種の生殖細胞の保存をしたり、もっと身近な動物では、優秀な盲導犬の育成にも生殖補助技術の使用が有効です。

受精卵の研究と医療、動物産業への貢献

夢ナビライブ2018 名古屋会場

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人工授精が支える動物産業

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ミトコンドリアと受精との関係

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農大和牛の開発

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講義を視聴する(30分)

この学問が向いているかも 基礎畜産学、応用動物科学

東京農業大学
農学部 動物科学科 教授
岩田 尚孝 先生

メッセージ

 「畜産学」というと、牛やブタの世話をするイメージがあります。しかし内容としてはヒトに通じる部分が多く、妊娠に至るまでの手伝いをする胚培養士になる人も増えています。また昨今話題の再生医療やiPS細胞、遺伝子組換え技術なども実は体外受精などを含む生殖技術がベースになっています。
 日本は少子化、高齢出産が当たり前の時代になっています。そんな中、ヒトにもフィードバックできる研究は興味深く、将来的なニーズも高い分野だと言えるでしょう。

先生の学問へのきっかけ

 牛やブタなど家畜の繁殖に関する研究をしています。研究の対象は動物ですが、繁殖の研究は結果的に人間にも役立つ研究になっています。現在の研究を志したのもそのような理由からで、今も変わらずそこに研究のやり甲斐と魅力を感じているのです。研究内容は多彩で、神戸で働いていた頃は家畜の性別を産み分ける方法を模索していました。しかし、これは倫理的にヒトへの応用は難しく、自分の興味で終わってしまったのです。
 大学では、私の研究に興味を持つ多くの学生と、食肉センターから提供された卵巣や卵子を使い研究に励んでいます。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

動物園/胚培養士/不妊治療研究/医療・研究機器メーカー/動物薬製造・販売/製菓・食品管理・製造・販売/教員/農協・営農・金融

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岩田 尚孝 先生がいらっしゃる
東京農業大学に関心を持ったら

 東京農業大学は、地球上に生きるすべての動物・植物・微生物と向き合い、それらの未知なる可能性、人間との新たな関係を追究していく大学です。食料、環境、健康、バイオマスエネルギーをキーワードに、創立以来の教育理念「実学主義」の下、実際に役立つ学問を社会のため、地球のため、人類のために還元できる人材を養成しています。世田谷、厚木、オホーツクの3キャンパスに6学部23学科を有します。

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