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講義No.07205

科学的に「健康」をとらえる~疫学と保健統計学の世界~

動物実験では得られない「人についての証拠」

 現代では、さまざまな研究や動物実験によって生体のメカニズムの解明が進み、医療の進歩に大きく貢献しています。しかし、動物実験で明らかになったことが、そのまま人の生体についての直接的な証拠となるわけではありません。また、人間の細胞を取り出して実験することはできますが、体外で起こったことが、体内でも同じように起こるとは限りません。これだけでは人についての証拠にはならないのです。だからといって、人体実験はもちろんできません。そこでたどり着くのが、「疫学」という手法です。

「疫学」によって人間の健康に迫る

 疫学とは、人間を集団でとらえ、実際に起きていることを観察し、病気の様相や原因を究明する学問です。
 例えば、ある物質の発がん性を研究するとき、実験室でのさまざまな実験とともに、人間社会で実際にどういう現象が起きているのかが重要な「証拠」となります。ただし、観察なので、実験室での実験のように、細かく条件をそろえることはできません。さまざまな偏りを考慮して、調査対象を設定し、追跡し、比較することが求められます。疫学とは、そうした調査全体をデザインすることと言ってもいいでしょう。疫学調査によって得られたデータを解析するのが「保健統計学」です。両者は一体となって、人の生体についての証拠を探り、国や自治体の保健・医療政策に生かされたり、人々の健康行動への指標となったりします。

科学的根拠に基づいた医療(EBM)

 現代の医療では、個々の医療者の経験や慣習ではなく、「科学的根拠に基づいた医療」(EBM:Evidence-Based Medicine)を進めることが求められています。そのためには、疫学で得られる「人の生体についての証拠」は不可欠の要素です。さらに、疫学と保健統計学を学ぶことで、人に対する科学的な視点を培うことができます。それは、医療現場に携わるさまざまな職種にとって、不可欠な資質を養うことでもあるのです。

健康に関する情報の見方

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この学問が向いているかも 保健学、疫学、保健統計学、健康行動科学

埼玉県立大学
保健医療福祉学部 健康開発学科 健康行動科学専攻 教授
延原 弘章 先生

メッセージ

 現代の日本では、生活習慣病が大きな問題になっています。生活習慣病は予防がとても大切なのですが、そのためには一人ひとりが生活習慣についての正しい知識を持ち、健康にとって必要な行動をとることが求められています。
 ところが、今の日本に流れている大量の「健康情報」の内容は玉石混淆(ぎょくせきこんこう)です。何が正しい情報なのかを見極めること、正しい情報を発信することが求められています。健康情報を適切に扱うことが、「健康行動科学」の第一歩なのです。

先生の学問へのきっかけ

 祖父が医師、姉が薬剤師、学友の多くが医師をめざすという環境で育ちました。人間が健康に生きることについて、高校生のときから関心を深め、大学で保健学を専攻しました。生物の実験に取り組み、ネズミの胎児や染色体などを使った遺伝子レベルの研究をしていましたが、次第に研究分野を人間へ移していきました。それは、動物実験で得られたデータよりも、人間の調査を行う「疫学調査」のほうが、人間の健康のための指標に結びつくと感じたからでした。
 現在は疫学調査と保健統計を研究し、データの収集とその活用にも取り組んでいます。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

地方自治体一般行政職/医療機関総合職/学校養護教諭

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延原 弘章 先生がいらっしゃる
埼玉県立大学に関心を持ったら

 埼玉県立大学は、保健・医療・福祉の「連携と統合」を目指し、学科を超えた地域活動・研究活動を行っています。多くの優秀な若者たち、明日の社会づくりの希望を持った若い力がいつかそれぞれの地域や職場で、あるいは世界のどこかで、高い志と豊かな感性、深い知識や技術を持って貢献できる可能性を秘めた人材として育っていけるよう全力で応援します。

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